4.デートのお誘い!?

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4.デートのお誘い!?

 オレはイヤな予感がしながらふりむくと、やはり水瀬だった。  白くて細い手なのに、肩に食いこむぐらい、力強い。  このまま帰さない! という強い意志を感じた。 「あなた、こうなることを知っていたの?」 「……えっと、なんのことだ?」  オレはとぼけてみせるけど、水瀬は首をふった。  ぜんぜん、納得してないようである。 「わたしに抱きついてきたのは、事故に巻きこまれないようにするため?」  水瀬の言葉に、顔が熱くなる。  必死だったとはいえ、大胆なことをしてしまった。  だけど、超能力がバレるわけにはいかない。  オレはあせりながらも、頭をフル回転させて、言い訳をしてみた。 「ちがうんだ! 水瀬の歩いてる姿が、あまりにもかわいかったから、つい、抱きしめてしまったんだ!」 「……タクヤ。さすがに、それはないでしょ!」  オレのヘタすぎる言い訳に、タマキは頭をかかえてしまう。    ……いや、自分で言っていて「これはねーよ!」と思ったけど。  かわいい女の子を見つけたから抱きつくなんて、頭がおかしい。 「そう……。なら、あなたはチカンみたいね。もうすぐ警察が来るみたいだし、ついでに捕まえてもらう?」  水瀬に手首をつかまれる。 「わー、ストップ! ごめん! 全部説明するから、そこの公園にいこう。警察はやめて」  ごまかすのはムリっぽい。オレは降参することにした。 「わかった。そこで、ちゃんと納得のいく説明をしてね」  水瀬がニッコリと笑った。心なしか得意気な顔をしている。 「タクヤ……あんたって、ホントはバカなんじゃないの? テストの点で負けたのが恥ずかしいよ」  タマキは、心底呆れた顔をした。 (……だって、しょうがないじゃないか)  チカンで警察に捕まったら、親に怒られるだけじゃすまないだろう。  明日から、学校にもいけなくなってしまう。    近くにあった公園に場所をうつすと、オレたちは東屋にある切り株のような形をしたイスに、腰をおろした。  公園の中には、鉄棒で遊んでいる小学生が数人いる程度で、他にはだれもいない。  ここでヒミツの話をしても、聞かれる心配はないだろう。 「それじゃあ、さっきの事故について説明して」  お互いに簡単な自己紹介をすませたら、さっそく水瀬は説明を求めてきた。  約束なので、断ることはできない。オレはチラッとタマキに目を向けて、うなずいた。 「わかったよ。タマキ、これはしょうがないよな?」 「まあね。でも、また増えちゃうか……」  オレとタマキは、同時にため息をつく。  その様子を見て、水瀬はクスッと笑った。 「あなたたちって、仲がいいよね。ひょっとして、つきあってるの?」 「いや、そういうんじゃない。こいつとは幼なじみなんだ。兄妹みたいなもん」 「そうだね。タクヤは弟みたいな感じかな」  オレが兄だと思うんだが、メンドーなので、ツッコむのはやめておく。 「へえ、なんかいいね、そういうの」  水瀬は少しだけうらやましそうに、オレたちを見た。  水瀬は春休み中に、となりの県から引っ越してきたようである。  知り合いもいないし、クラスで友だちを作るのに、苦労しているらしい。 (みんな、水瀬のような『お嬢さま』に、どう接していいのかわからないんだろうな……)  だが幸運なことに、ここにはそういうのをまったく気にしない女子がいるのだ。 「じゃあさ、せっかく知り合ったんだし、あたしと友だちになってくれない?」  タマキはくったくのない笑みを浮かべながら、水瀬に向かって手を差し出す。  こういう物怖じしない性格は、父親ゆずりである。 「え、いいの?」 「もっちろん!」  タマキは、大きくうなずいた。  水瀬はしばらくじっとタマキの手を見ていたが、やがて、タマキの手をにぎった。 「うれしいな……、よろしく、佐倉さん」 「うん、よろしくね、水瀬さん」  大会社の社長の娘と漁師の娘。  まったく育ってきた環境がちがうが、意外とこの二人は親友になりそうだな、とオレは思った。
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