4.デートのお誘い!?

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「それじゃ、全部説明するよ」  仕切り直して、オレの超能力について、水瀬に説明することにした。  長谷川先生の実験に協力していることまで、すべて。  かくさず話すので、ヒミツにしといてもらう作戦だ。 『アラーム』は、オレの能力の中では特殊である。  自分か周囲の人に危険がせまると、頭の中に大きな音の警報が鳴りひびく。  そして、危険の内容については『未来予知』で確認することができるのだ。    ①予知の内容は、これからすぐに起こるできごと。  ②予知で映像を見ている間は、時間が流れない。  ③この能力は自動で発動して、お腹がへることもない。    オレは、この能力の名前を『アラーム』と名づけた。  ヘッポコな超能力しか使えないオレであったが、この能力にはなんども助けられている。  説明を終えると、水瀬は感心したようにうなずいた。 「そっか。朝丘くんは、超能力者なのね」 「あんまり、驚かないんだな」 「ううん。かなり驚いてるよ。でも、世界には八十億の人間がいるし、こういう不思議な力を持つ人がいても、おかしくないでしょ。能力を見せてもらわなかったら、インチキと疑ったかもしれないけど」  水瀬の反応に、オレたちが、逆に驚いてしまった。 「水瀬さん、すごいね! あたしなんて、絶対に手品だと思って、なんどもやらせたし」  そう、タマキはなかなか信じなくて大変だったのだ。  あのときは、タマキが信じるまで、毎日倒れる寸前まで超能力を使うはめになった。 「オレが怖くはないのか?」  おそるおそる、聞いてみた。 「なんで? 命を助けてもらったのだし、すごく感謝してるよ」 「…………!」  水瀬の言葉に、感動してしまった。 (……こいつ、フツーにいいやつじゃん!)  せっかく助けたのに、怖いだのキモいだの言われていたら、ショックを受けていただろう。  明日から、学校にいきたくなくなったかもしれない。  さっきまでは住む世界がちがう女子だと思っていたが、話してみるものである。  オレは心から、水瀬を助けられてよかったと思った。 「それで、命の恩人である朝丘くんに、お礼をしたいのだけど、なにがいいかな? うちには家訓があってね。『受けた恩は絶対に返しなさい!』って、きつくいわれているの」 「へー、そんなのがあるんだ。さすがは『お嬢さま』」 「ちょっと、佐倉さん! 友だちに『お嬢さま』なんて、言い方してほしくない」 「あ、ごめんね。もう言わないよ」  タマキが手を合わせてあやまる。  どうやら、『お嬢さま』扱いは嫌いなようである。  オレも気をつけよう。 「お礼って言われてもな……、オレの超能力をヒミツにしてくれれば、それでいいよ」 「それじゃ、ダメ! 命の恩人に恩を返さないなんて、ありえない! なんでも言ってよ」 「……うーん、そう言われても」  オレは困ってしまう。  水瀬の家はお金持ちだから、最新のゲーム機がほしいと頼んだら、二つ返事でくれそうな気がする。  でもそんなことが親に知られたら、絶対に怒られる。  それはもう、すっごく怒られるに決まってる。    それにそもそも、お礼を目当てで助けたつもりはない。  たまたま、アラームが発動して、たまたま、そばにいたタマキと水瀬を助けただけ。  オレと同じ能力を持っていたら、みんな同じことをしていただろう。  オレが「うーむ」となやんでいると、タマキがニヤニヤと笑いながら言った。 「タクヤ、ヘンなことは頼んじゃダメだよ」 「なんだよ、ヘンなことって?」 「水瀬さんがかわいいからって、デートしてほしいとか」 「な、バッカじゃねーの!」 「あはははっ、ジョーダンだって。顔が真っ赤になってるよ」  タマキにからかわれていたら、水瀬が首をかしげた。 「わたしとのデートが、恩返しになるの?」 「そりゃ、水瀬さんみたいにかわいい子とデートできるなら、学校中の男子はよろこぶでしょ!」 「朝丘くんは?」 「え、それは……」  デートなんてしたことがないので、どう返事をしていいのかわからない。  したくないと言うのも、失礼な気もするし……。 「うん、決めた! 朝丘くん、わたしとデートしよ?」  そういって、水瀬がニッコリと笑いかけてきた。 「ごめん、水瀬さん。ただのジョーダンだから! タクヤとムリにデートなんてする必要なんてないよ」  タマキがあわてていうが、水瀬は首をふった。 「大丈夫、ムリなんてしてないよ。わたし、朝丘くんにキョーミがあるんだ」 「「ええっ!」」  その言葉に、オレとタマキは、ビックリした声を上げた。 「朝丘くん、来週の日曜日に、わたしとデートってことでいい?」  オレは、水瀬の大きなひとみに、まっすぐに見つめられ、 「……う、うん」  と、ただうなずくことしかできなかった。 
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