人類の脅威

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 深い森の入り口で俺は奴の漆黒のローブを一瞬だけ見た。無線機を使って仲間の竹下に連絡をした。 「奴が森に侵入するのを確認した。竹下と俺で奴を挟み撃ちにしよう」 「了解。奴は凄まじく強い。草壁も気をつけろ」 「当然だ。狩りは最後が肝心。奴を追いかけてここまで来た。逃すわけにはいかない」  俺は森に足を踏み入れた。空が見えなくなるほど林で覆われている。葉の隙間から微かな光が洩れていた。まだ夜まで時間があるが辺りは鬱蒼と繁る木々で薄暗くなっていた。  夜になると一層と視界が悪くなる。奴を捕捉できても夜目が使える奴とでは勝負にならないだろう。  悠長にしている時間はなかったが、奴に気づかれないように一歩ずつ慎重に獣道を進む。地面の草木を踏む音をできるだけ最小限にした。  この森に合わせた迷彩服と衝撃吸収ブーツが役に立っているようだ。奴は目も耳も鋭い。俺の技量だけでは既に奴に狩られていただろう。装備品に尊敬の念すら抱いた。  汗がじわりと肌を濡らす。呼吸が困難だ。奴を追いかけてこの森まで来たが、奴に誘い込まれた可能性もあった。  竹下はどうしているだろうか。森の中で迂闊に無線機は使えない。反対方向から奴に近づいているといいのだが。  歩みを進めると水音が聞こえる。澄んだ川が流れていた。俺は川にかかる木の橋を渡ろうとした時に気づいた。  水音に紛れて足音が聞こえた。俺は咄嗟に藪の中に身を隠して音の方向に全神経を尖らせる。木の葉を踏み潰して進む音が聞こえる。  竹下はまだここまで来ていないはずだ。音の主は奴しかいない。しかしそこまで考えて、事態の危険を察知して地面に這いつくばった。
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