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小枝の折れる音が聞こえて、俺の思考は現在に引き戻された。茂みに隠れて奴の姿を探すがどこにもいなかった。細心の注意を払いながら前に進む。
森に入った時よりもさらに険しい道になっている。先程のナイフが脳裏を過ぎる。どこからナイフが襲ってくるかわからない極限の緊張感があった。
しかし俺には時間がなかった。夜になるまでに倒さないといけない。仮に奴を倒せなくても死んでいった仲間のためにも一矢報いたい。
俺は様子を伺いながらゆっくり歩くことをやめて、全力で走り出した。俺は自分の命よりも仲間の無念を晴らしたかった。
藪の中からナイフが飛んできた。首、胸、足に向けて襲ってくるナイフを致命傷を避けながら怯まず前に走った。
そして俺は奴の姿を眼前に捉えた。ローブを纏って目深にフードを被っていた。俺が奴に銃を構えると、奴がゆっくりとフードを外した。
そこには白く艶やかな髪をした碧眼の綺麗な女性が佇んでいた。ローブを脱ぐと全身の骨格が無数の鋭利なナイフで覆われていた。
俺はその姿に恐れを抱きながら引き金を引こうとした。すると奴があどけない子供のように涙を流した。
「あなたも私を殺そうとするの? 森の入り口で私の姿をわざと見せて、あなたの能力を考慮した上でナイフを投げるのを遅らせて助けてあげたのに」
俺はその言葉に答えられなかった。確かに奴なら俺をもっと早く殺せただろう。銃を向けられる前に俺を倒すことも容易いはずだ。
「仲間を無惨に殺したおまえが俺に情けをかけた所で許すことはできない」
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