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剥がされていく桜鯛の鱗
舞い散る桜の花弁
風にゆらりゆられ
天に昇りゆくワンシーン。
天を見上げる。
面白い雲だねと微笑む君が指差す先に鱗雲。
父さんが好きだった
桜鯛の鱗のようだ。
桜鯛を釣りに行って
帰ってこなくなった父さんは今どこで何をしているのだろう?
この鱗雲を辿ってゆけば
大好きだった父さんに会えるのだろうか?
そんな子供じみた思いを自嘲しながら、僕は彼女の小さな手のひらを握った。
桜鯛のように鮮やかな桜の花弁が
我が娘の門出をお祝いしているようだった。
きっと父さんからのプレゼントだ、と思ってしまう僕は、どこまでいっても父さんが好きなのだと思う。
父さんが好きな僕は歳を重ね、僕色の父親となったのだ。
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