nail in the coffin

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 多様性の時代だ。世間ではその言葉をまるで“最先端”であるかのように繰り返す。でも実際は?  世の中のありとあらゆるものは未だ“恋愛至上主義”が根深い。だって、物心ついて目にする触れる“物語”たちは最後はみんな結婚してめでたしめでたし。世の中の作り出す幻想の人生たちでさえ、そのほとんどは恋愛で成り立っている。  その世界では“恋の終わらせ方”を、誰も教えてくれなかった。失恋したら終わるのか、そうではない。大事にしていた気持ちが傷ついて、それを守ろうとするために胸の奥底に仕舞っておくのではないだろうか。 「この気持ちはどうして存在してはいけないの?」  自分以外の誰かから非難されるなら、この気持ちは仕舞っておこう。小さくなるまで、隅に溜まったほこりみたいになれば、次に開けたときに空気に紛れて消えていく。きっとそう。  でも実際は、大事になればなるほど大きな箱を用意する。それでも飛び出してしまいそうになれば、大きく頑丈な箱を用意する。金庫のような分厚い壁で覆って、中で強く大きくなっていけばいい。 「恋の終わりくらいは自分で決めてもいいでしょ?だって教えてくれなかったんだから」  これがわたしの“めでたしめでたし”。
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