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世界で一番楽しい義務
「ただいま」
「おかえりなさい」
このやりとりがあたりまえということに、なんだか照れる。三日間出張してたから、新鮮な気もするし。
一線を越えてからすぐ、私達は結婚した。少しでもたくさん一緒にいるためには、それが最善の選択だと、意見が一致したから。
一緒に暮らし始めて、記念日よりも普通の日を一緒に過ごせることが幸せなんだと、つくづく実感する。
「ごはんとお風呂、どっちを先にする?」
「んー、じゃあ、お風呂」
「沸いてるから、どうぞ」
尚さんがお風呂を済ませてから一緒に夕飯を食べて、疲れているようだったからそのまま寝室に行ってもらった。
後片づけをして、私もお風呂に入り、寝室へと向かう。
ベッドを見ると、尚さんは穏やかな寝息を立てて眠りに就いていた。気持ちよさそうな寝姿に、とても安心する。
私ももう寝よう。寝ている尚さんの隣にそっと入り、ふれるだけのキスをして、眠りに入ろうとまぶたを閉じた瞬間。
「……律さん?」
少しかすれた声で訊ねられ、どきっとする。尚さんの寝起きの声はなんだか色気がある。
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