24人が本棚に入れています
本棚に追加
5時間目が終わるころには、教室の中でも音が聞こえるほどの雨になっていた。
やった。祈りが通じた。
今日は掃除当番も係りの仕事もないから、帰りの会が終わるとランドセルを背負って、梢は昇降口へ向かった。
周りの子たちは、友達とおしゃべりをしながら、今日は何して遊ぼうか、誰それの家に集合ね、とか楽しげに笑っている。
でも、梢はいつも一人だから、今日も誰にも話しかけられずに廊下を歩いた。
寂しく思うこともあったが、今日はあの傘がわくわくをくれるから平気だ。
そそくさと靴を履き替え、壁際に置かれている傘立てを覗き込む。――そこには、パールピンクの柄の、梢の傘がつんと澄まして刺さっていた。
思った通り、かわいくってすごく目立つ。
こんなかわいい傘、他の誰も持っていない。
きっと、みんなが注目すると思ったんだ。
ちらちらと周りを見回して、自分の傘なのにおずおずと手を伸ばす。
そのときだった。
最初のコメントを投稿しよう!