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「あれぇー、こずブーじゃん。もしかして、そのピンクの傘、あんたの?」
背中のほうから、聞き慣れた声が梢の頭にぶつかった。
悪意のあるあだ名に、胸のあたりがきゅっと痛む。
思わず手を引っ込めて、振り返る。同じクラスの……いつも梢に意地悪をする、夢菜が取り巻きを連れて立っていた。
梢は小さい声で、
「うん……そうだけど……」
「はぁー? よく聞こえないんだけど! ねぇねぇ、こずブーには似合わないと思わない? こんなフリフリの傘」
「そーゆーのは、もっとかわいい子が持つべきじゃない?」
「だよねー」
取り囲んだクラスの女子たちが、けらけらと笑って夢菜に同意する。
梢は俯いてランドセルの肩ベルトをいじった。
フンと笑うと梢を押しのけるようにして、夢菜は傘立てに近づき、顔をしかめた。
「あれ、あたしの傘ない!?」
「夢菜ちゃん、忘れたんじゃないの?」
「忘れてないもん。ちゃんと朝ここに立てた! ――あ、ちょうどいいや。ねえ、こずブー。あんたの傘、あたしが借りてあげるよ」
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