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梢は唇をきつく結んで、俯いたまま夢菜をじっとりと上目遣いに見た。夢菜はにやにやと笑うと、
「こずブーにはもったいないし。あたしのほうが似合うと思うし。ちゃんと明日、返してあ・げ・るから。いいよねー?」
梢は唇を歪め、ぼそぼそと呟いた。
「……でも……その傘……おばあちゃん……から……だから……」
「えー? 全然聞こえなーい。――さ、行こ! 今日は、みんなでナナプリのライブDVD観るんだもんね」
後の言葉は取り巻きたちに言って、夢菜は梢の新しい傘を掴んだ。
俯いたままの梢を置き去りに、クラスメイトたちはきゃあきゃあと戸口へと向かって行く。
梢はじっとその後ろ姿を恨めしげに見送り……口元を、手で隠した。
こみ上げて来て堪えきれない笑いが、周囲の子供たちに見られないように。
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