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追いかける
電車が視界に入ってからノゾムの足は動き出す。フライングせずにスタートするのだ。
それでは大人の人間だって追い付くはずはない。
近くが駅のためか、スタート自体はゆっくりなのだが、すぐに加速し始める。
電車に追い付きたくて、ノゾム本人は無我夢中、まさにがむしゃらに走る。
八両編成の電車はノゾムの存在に気づいていないように、涼しげに通過していく。並走はものの十数秒であった。
そろそろどや顔を見せつけながらノゾムはUターンしてくるだろう、そう母親は思っていたのだが、ノゾムは立ち止まるどころか、小さくなった電車をまだ追いかけている。
それどころか
「ぎゃああああ!!」
叫び声をあげて、電車を追いかけ続けているのだ。
母親は、ようやくその異変に気づいた。
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