追う

1/1
前へ
/6ページ
次へ

追う

「ノゾム! 待ちなさい!!」  母親は大声で声をかける。 まだ小さい歩幅なので、走れば母親は追い付くのだが、追い付くだけではだめなのだ。  ノゾムの進んだ先には、交差点がある。 交通量はさほど多くはないようだが、母親からすればヒヤリどころではすまされない。  全速力で、母親は走った。追いかける。 そよ風が強風の向かい風のように感じて、母親は顔を険しくさせた。  つんざくようなクラクションが鳴る。  全てが止まったようだった。  母親だけが走り続けて我が子を追いかけていたが、ノゾムは泣きじゃくりながらその場にへたれこみ、クラクションを鳴らした車もその場に停車した。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加