1章

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 そんな優しい先生の下で働くスタッフも、いい人揃いです。  看護師の高松さんに、医療事務の盛岡さんと前橋さん。  三人とも朗らかな性分で、大津先生を支えてくれます。  処方する薬は医院の隣にあるかなざわニコニコ薬局が主に応需していますが、ここの薬剤師の長崎先生もまた、大らかでいい人なんですよ。 「お疲れさまです、先生」  長崎先生は毎週月曜日の午前診が終わる頃、おおつ内科を受診し、この機を利用して大津先生と仕事の話をしていきます。 「この頃薬の欠品が多くて、ご迷惑をおかけしています。芍薬甘草湯もしばらく入荷できそうになくて」 「それは困りましたねぇ」 「トルリシティも出荷調整なんですが、うちはこれまでに入荷した実績がありますし、切らすことなく用意するようにします」  長崎先生の報告に、大津先生は「いつもありがとう」と微笑みながら頷きました。  医薬品の欠品は長崎先生の責任ではなく、三年前の後発品メーカーによる製造ミスから始まった業界全体の問題なので、個人を咎めるようなものでは無いからです。  ひとしきり話を終えると長崎先生は「それから僕の方は、またいつもの薬をお願いします」と言いました。 「ハイハイ、分かりました」  なんでも気さくに応じてくれる大津先生が長崎先生は大好きで、大津先生も理解の早い彼を気に入っており、同年代の二人は仲良く助け合って働いていたのでした。
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