星を創る人

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 僕は星職人。星を創る事が仕事だ。クライアントのオーダーにそった星を創る。この前は 「夫婦の星を創ってくれ」 というオーダーだったから、ベガとアルタイルを創り、そしてそれぞれに織姫、彦星という別名を付けた。七夕伝説を考え添付し、クライアントに提出した。クライアントからOKが出たから2つの星を宇宙に放った。  今は、新しいオーダーに取り掛かっている。オーダー内容は 「生き物がいる、外見も中身も美しい星」 星創りのやり方は職人1人1人違う。僕の場合は、まず設計図作りから始める。生き物がいるとなると、酸素を作る植物がいる。その植物が自生するための陸地も必要だ。すべての源になる海は必需だろう。生き物はどこに住まわそうか。陸地に住むとなると体の作りが複雑になる。今回の予算と時間ではそこまで凝った生き物は作れない。だから海に住んでもらおう。  「美しさ」の部分だけど、陸地の緑と海の青のバランスを良くすれば外見は綺麗に見える。海に生き物が住むから、青の部分を多くなるな。中身の美しさは、海を青く澄ませて、連なる山脈を創り、草花や木々の配置をバランス良くすれば何とかなりそうだ。  設計図ができたら、実際に星を創る作業に入る。半径10メートルの巨大な球体に、設計図を元に色々なものをおいていく。球体には入口があって中に入ることが出来る。その中に、海や山をおいていく。  ミニチュア版の星。この球体の中に星の全てを詰め込んでいく。  最後に外見を整えたら、完成だ。結局、海と陸の比率は7対3になった。そして、最も大切なことを。 名前を付けなければ。この星に命名をしないと。青い星、丸い星、、、。色々考えていると、ふっと、降りてきた。  地球。太陽系第3惑星地球。いいね。これにしよう。  地球を太陽系の月の横に放ち、この案件は終わった。結果として月は地球の衛生になることになったけれど、生き物が住める環境を作るためにはこの配置がベストだ。  クライアントから依頼料が振り込まれ、僕は次の仕事に取り掛かった。1週間後、クライアントから地球についての追加オーダーが来た。 「新しい生き物を創ってほしい。できれば陸に住む生き物で。」 すでに創ってある星に対して追加オーダーが来ることは珍しくない。僕はこのオーダーに取り掛かるために、現在の地球の様子を観察した。進化の過程で自力で陸地に住めるようになった爬虫類が今の地球の覇者だな。とりあえずこの大型爬虫類を絶滅させるところから始めないと。僕は地球に隕石を衝突させることにした。隕石衝突からしばらくして、大型爬虫類は完全に絶滅した。生き残ったのは魚類と、小型の哺乳類か。陸に住む生き物っていうのがオーダーだから、小型の爬虫類を強制的に進化させて、地球の覇者に変えよう。  僕は小型爬虫類をサルにまで進化させた。これから先の進化は彼ら次第。クライアントからの依頼料も振り込まれたし、追加オーダーも無事完了だ。  それからしばらくして、地球のある場所に別の星を設置する話が浮上した。これはクライアントからの要望で決定事項らしく、僕が地球の移動または壊滅、そこに新たに設置する星の制作を担当することになった。  サルは知能を発達させ、2足歩行となり、文明を創っていた。既に地球の地下資源を使い始めている。ここまできたら、地球を別の場所に移動させることは無理だ。不審に思われてしまう。だったら地球を壊滅させるしかない。  となると困るのは壊滅の方法だ。大型爬虫類の時みたいに隕石を衝突させる?火山を噴火させる?月を無くす?色々考えたが最良の案が浮かばずにいた。  気分転換がてら地球を観察していると、地球が温暖化していることに気づいた。あの生き物はどんどん文明を発達させ、様々なものを作った。しかし、それと同時に廃棄ガスが大量に発生し、地下資源を使いすぎ、生態系を壊した。同種族同士の醜い争いは、森を焼き、海の青さを奪い、地球を汚した。これはチャンスかも知れない。僕はそう思い、強制的に地球を壊滅させることをやめ、待つことにした。  僕が放っといても、この生き物は地球を勝手に壊滅させてくれるだろう。僕が創ったこの青くて美しい星を壊滅させてしまうのは勿体ないが、また同じようなものを作ればいい。僕は星職人だ。いくらでも星を創ることが出来る。  僕は今、地球が壊滅するのを待ちながら、そこに新たに設置する星の設計図を考えている。    
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