それはじわりと蠱惑的で

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「ところで白川さん、お昼のことだけど」  こほん、と軽く咳払いして切り出すと、白川さんはくるりとカールした睫毛をしぱしぱとしばたかせた。 「休憩もとれないくらい忙しいなら、こっちに作業を振ってくれても」 「なに言ってるんですか。美鳥さんは美鳥さんのお仕事をしてください」 「でも、休憩はやっぱりとらないと」 「大丈夫です。いつもじゃないですし。今日だけですよ」  白川さんは数か月ほど前にうちの部署に加わった。  未経験者ではないものの、会社によって勝手は異なるし、周りの人間とも一から関係を築いていかなきゃいけない。そういった意味ではまだまだ手探り状態だろう。  知識と経験があればすんなりとすべてがうまく回る、というわけでもない。 「E社さん、急にサイトの仕様を変更してほしいって、なんなんですかね。指一本でちゃちゃっと変えられるとでも思ってるんですかね? ほかに影響が出ないか調査する必要だってあるし、エンジニアに伝えるこっちの身にもなって欲しいですよ。まあ、それをどうにか調整するのが私たちの仕事ですけど。美鳥さん、よく何年もE社さんとやってきましたよね。私ならぶち切れてます」 「まあ、これでもよくなった方だから」 「えっ、前はもっとひどかったんですか?」
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