浅草寺へ

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浅草寺へ

「公威様がいらっしゃるから、安心して観光に行けますもの。ねえ、いいでしょう?」 「いいですよ。しかし、帰りが遅くなってはいけませんから、浅草寺でお参りして仲見世をぶらぶらする程度にしておきましょう」 「公威様、申し訳ありません」 私は公威さんに頭を下げた。 「いや、全然。浅草詣でなんて、願ってもない休日の過ごし方だ」 「他にお約束もありましたでしょうに。貴重なお休みの日に、私たちに付き合わせてしまって申し訳ありません」 私はもう一度お詫びする。 言外に、芸者さんたちと遊ぶ予定を中断させたことの、お詫びの意味を込めたつもりだった。 公威さんは、すぐにそれを理解したようで、笑って答えてくれた。 「あの姐さん方とも、道でバッタリと出会っただけですよ。なんとなく、彼女たちに着いてきただけで」 「よく遊びに行かれるんですか? その、なんて言うんでしたっけ?芸者さんがいらっしゃる場所」 「花街(かがい)ですかね?」 「そう! それそれ」 律子と今西さんの好奇心たっぷりな態度に比べ、公威さんはあっさりしたものだった。 「付き合いでね、仕方なく」 「りっちゃん、失礼よ。公威様、お答えなさらなくて大丈夫ですわ」 そう言いながら、実はそのことを一番知りたかったのは私かもしれない。
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