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社会の一員となる
その翌週、私は千代田のお城の近くにある女子専門学校にご挨拶に伺った。
頼子さんのお父様から紹介された、理事長先生と校長先生から仕事の説明等を受けることになり、
「じゃ、私はこれで失礼します。あとはよろしくお願いしますよ」
と、頼子さんのお父様は軽く仰って理事長室を出ていかれた。
私の緊張をほぐすように、理事長先生も校長先生も、それはそれは優しく丁寧に話をして下さって、私は内心ほっとする。
「我が校は女子職業学校ですから、職業教育に力を入れています。最近は女学校を終えて来られる方も増えましたが、女学校で学んだ経験の無い学生さんも多いです。淡路さんに期待するのは、学生さんの “友” のような立ち位置で手助けしてほしいということです」
私は本当に “仕事を始める” のだ。世間に出て社会の一員となるのだ。
今までは、お金を払って学んでいる立場だったが、これからはお金を払ってもらう立場に変わる。
『働く” というよりも “友として手助けする” 立場でいてほしい』
校長先生と理事長先生のお言葉は、そんな私に気を遣って下さっているように感じられた。
(頑張らなければ)
校長先生のお言葉は、逆に私からやる気を生み出してくれる気がした。身が引き締まる思いとはこのこと。
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