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私たち、どうなるの
「文子お姉さま、これから私たちどうなるの?」
律子が深刻そうに尋ねてくる。
「どうって」
私にもわからない。とりあえずは警察に届けるしかないのでは……。
「お姉さまったら! そういうことじゃなくて。お金が一文もない状態じゃ、今夜のご飯も食べられないわ」
「そうね。今日は昨日の晩御飯の残りをいただくしかないわ」
「はあ?」
律子は目を丸くした後、脱力したように首をガクッと真下に向けている。それから彼女はクスクスと笑った。
「お姉さまには敵わないわ」
私たちの会話をそばで聞いていた、小間使の千代も声を出して笑っている。
その日は一日中、店はもちろん、家のほうまで警察の方がたくさん来て、落ち着かない一日を過ごした。ようやく警察の方が引き上げたのは、そろそろ日が傾く時刻になっていた。
その日の夕餉は最悪だった。
父が亡くなって以来、私たちは暗く沈んだ日々を過ごしていたが、母がお商売に奮闘するようになってから、活気のようなものは取り戻せつつあったのだが……。
「お姉さま、昨日の残り物は見当たらないわね」
律子が私に顔を寄せて小声で言うので、私は思わず笑ってしまった。
「何がおかしいの?」
母が、いつになく厳しい声音で言うので、私と妹は背筋をピンと伸ばした。
母は私たちのほうを見て、はっとなった。
「ああ、ごめんなさい。……私はもう寝みます」
そう言うと立ち上がり、部屋を出て行った。
あとに残された私たち姉妹、そして千代は、なんとなく気づまりで、白けたように黙りこくって食事を終えた。
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