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そのまま頼子さんのお宅にご一緒して、私はご両親にお会いした。
おふたりとも、こちらが恐縮するくらい歓迎して下さって、お話はあっという間にまとまった。
「助手ですから、気楽に構えていただいて大丈夫ですよ。勤務時間や給金などは、明日にでも学校で事務方と相談して下さい」
「それにしても、ようございましたわね。こんな素敵なお嬢様が来て下さったら、生徒さんたちも大喜びでしょうね」
頼子さんのお父様とお母様は頷き交わす。
「生徒さんたちは、私とあまり歳は違わないのですよね?」
私が最も心配しているのは、その点だ。
もちろん、私なんぞに女専の助手が務まるかしら、という不安もあるが。
「うちは、高等科と専科がありましてね、高等科は15歳に満たない学生も多いんですよ。逆に専科は、三十路の学生もいます」
「30歳を過ぎてる学生さんですか!」
「未亡人もいれば、子供の手が離れたので勉強したい、という女性もいますよ。幾つになっても、学べる場はあるんです。本人のやる気次第だね」
頼子さんのお父様は、途中から頼子さんのほうを向いて話される。
「お父様、『本人のやる気次第』って私に仰りたいのよね」
「はは、そうだね。出発まで英語の勉強を頑張りなさい。せめて読み書きはスムゥズに出来るように」
仲良く会話する頼子さんたちの姿は微笑ましく、そして羨ましいものだった。
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