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朝起きて、血の気が引いた。これまでの人生で一番恐ろしい体験だった。
夢だよな、信じたくない、現実と。無駄に五七五。本当に、何度もそう思った。現実逃避。でも、残念ながらこれは現実だ。夢じゃない。
酔った時に出るのは、本当の人格。そんな話を聞いたことがある。つまり俺は、俺の本当の人格は……。ちょっと考えたくない……。
深淵については考えたくないけど、とにかく謝ろうと思った。それしかできないだろう。でも愛佳ちゃんは、謝罪しようとする俺の言葉をすばやく遮った。
「練習に付き合ってほしいです。もちろん、宮西さんに新しい彼女ができるか、私に彼氏ができたら、終わり。約束します」
そう言ってきた愛佳ちゃんの目を見て、正直ヤバいと思った。
俺のこと好きだろう、この子。気軽さを装っているところが、却って重い。
今まで興味がなかったから、全然気づいてなかった。でも、考えてみれば、誘いに乗ってくる時点で、普通、ある程度好意はあるよな。よほど倫理観が壊れてない限り。
好きでもない子を誘ってヤッてしまった、俺の倫理観は皆無。
自分のしたことを考えると、ここでバッサリ振るのは良心がとがめた。なんとか穏便に、愛佳ちゃんから俺のことを諦める方向に持っていきたい。
この時の俺は、本当に、自分のことしか考えてなかった。
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