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今日、私達は車で遠出をしている。ハシビロコウを見たい。そんな私のリクエストに、航平くんは喜んで応えてくれた。
「ごめんね。ハシビロコウ、見られる場所がこんなに少ないって、知らなくて」
ハシビロコウは、日本に十三羽しかいない。見られる動物園も六つだけ。私達の居住地からは公共交通機関をいくつも乗り継がないと行けないところばかりだったので、車で行くことにしたのだ。
「どうして謝るの?」
「いろいろ調べたり、運転したり、大変だと思って」
「俺、愛佳ちゃんからリクエストされたのが、すごく嬉しくてさ!」
航平くんはにこにこ笑ってそう言ってくれた。
「わがままかなあって」
「いいじゃん。もっと言ってよ、わがまま。受けて立つ!」
航平くんはいつでも、私の希望を叶えてくれようとするし、本当に欲しいものを差し出そうとしてくれる。
無理をしているんじゃなくて、楽しんでやってくれているのが、とても嬉しい。
画像でしか見たことのなかったハシビロコウと、ついに初めて対面した。
ハシビロコウ、いかつい顔だと思っていたのに。実物は、なんだかものすごく楽しい雰囲気で、可愛い。
チャーミング。チャーミングだ。魔法にかけられた感じ。
実際に会ってみないとわからない。
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