6話 夢の残滓

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「なあ、俺たちもああいうの今度しようぜ」 「あなたがしてもらう側ならいいですよ」 「いやこの前は俺が譲歩したから、次はアマネルな!」 「ではダイスで決めましょうね」  唐突にころころとダイスを振り始める天使。そういうのは俺のいないとこでやれよ。馬鹿馬鹿しいので無視してベーコンエッグとレタスを乗せたトーストに齧り付く。 「何を一人で食ってんだよ結城。んまそー」  声のしたほうに顔を向ける。俺のベッドに我が物顔で寝そべっている佐野の姿があった。 「起きたか。迷惑なやつだな」 「顔のストレッチしてんの? さっきから表情がころころ変わって面白いな。イケメン結城主任のきゃわわんな姿、広報部の女子に見せたぁい♡」 「……茶化すな」 「いやでも結城は実際いい男だよ? なのに独り身なんて世の中おかしいよね」 「確実に馬鹿にしてるだろ」  楽しそうに佐野が笑う。朝からテンション高すぎだ。 「結城は顔しかめてること多いからさ、もっと笑顔だぞー? そしたらきっと良きパートナーに巡り会えるでしょう。今日の佐野くん占い」 「え……そうか。それはまずいな。気をつける」  言われて、確かにそうかもしれないと反省する。片頭痛が表情に出ているのかもしれないが、しかめっ面では運が逃げる。笑顔は大切だ。 「そう、気をつけて俺にもにこにこしてね」 「ん? おお……こうか」 「そうその調子」  笑顔を作った俺に対し、佐野は満足げに笑顔を返した。 「結城は俺に対してはニブいけど、他の人の機微にすげえ敏感じゃん? 後輩が迷ってる時的確なアドバイスしてやれてるし、そういうの課長からも評価されてんのにさ。それなのになんで俺だけずさんなの」 「気のせいじゃ? なにさっきから褒めたり落としたり……気持ち悪いな」  他人の天使と悪魔が見えているからこそ、後輩が悩んでいる時に絶妙なタイミングで声掛けしてやれる。これは悪用ではないし、見たくて見ているわけではなかった。仲の良さの深度は関係ない。仕事が円滑に進むならそのほうが良いのだ。  何故朝から佐野がうちにいるかと言うと、昨日俺が帰ってきたあとすぐに訪ねてきたのだ。飲みすぎて帰るのが億劫だから泊めてくれなどという無体な申し出に、頭痛がひどかった俺は断るのも面倒で泊めてやった。たまにそんなことがある。 「しかし相変わらず起きるの早すぎだよね。年寄りかよ、まだ六時前じゃんか。もっとベッドでイチャラブなピロートークしようよ。ね」  そもそもイチャラブした覚えのない佐野は、にょろりと俺のベッドから這い出した。 「早朝の空気が好きなんだよ。人少ないし。ほら佐野の分も作ったから食えよ」 「おー。毎日作って。遊びに来てやるから」
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