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アマネルも追い打ちをかけてきた。相変わらず意見の合致した天使と悪魔。なんなんだこいつらほんと。
だけど宅飲み……か。そうだな。それも良いかもしれない。
「外食ばっかもなんだし、コンビニで何か買って、どっちかの家で飲むとかどうだ?」
一応年上だしな。ここは俺から提案してやって、島田の動向を探ろう。
「えっ!? いいんですか」
「わぁ」
急に島田がシャワールームの仕切りから俺の方をばっと見た。いきなりだったのでびっくりした。あまり大きな声を出すような人間ではないことを、短い付き合いながら知っていたつもりだったが、そうでもなかった。
島田としてもわざと見る気はなかったのかも知れないが、思いがけず見てしまった俺の素っ裸にその目が釘付けになっている。……いやどこ見てんだ。
男同士で変に恥ずかしがるのも妙な話だし、隠したりはしないけど、そんなにじっくり見ないで貰えると嬉しい。あ、これが視姦……? こんなとこでか。
「凝視されるとさすがに照れるぞ?」
俺の声にはっとして、島田はようやく顔を背けた。
「――失礼、しました」
声が硬い。シャワーを止め、水滴を拭うのもそこそこに島田が急いで服に着替え始めた。その間天使と悪魔がまたしてもわちゃわちゃ騒いでいたので、思わず俺までシャワーを止めて見守ってしまう。
当の島田は耳まで真っ赤だ。なんだこれウブかよ。見られたの俺だぞ。
「紡久さんがびっくりしてるじゃないかー! 駄目だよ急に覗くような真似したら。事故とは言えマナー違反!」
「っしゃ紡久さんのマッパ脳裏に焼き付けた! 良かったなウリエル。ソロプレイが捗る。いや、もうこの際持ち込め今夜だ決めろ」
「駄目ーっ! そんなことしたらさっきのアクシデントがわざとみたいになっちゃうだろ! ウリくん泣かないで」
色々と悪魔が卑猥なことを言い募って島田をそそのかす。天使はそれを全力で阻止しようと応戦する。なかなかにカオスだ。
島田って……実際の態度に出ていないだけで、こんなふうにいろいろ葛藤しているのかな。俺の為にいろいろ考えて、我慢したり悩んだりしているのかなとか思ったら、なんか可哀想になってきた。
飛び級していると言っていたから、自分より年上しかいない環境下で、これまで無理に背伸びして成長してしまったのだろうか。その可能性はあった。
「実に青いですねぇ、大和くん。もう結城さんから誘導してはいかがです? 見ているこちらがじれったい。まんざらでもないんでしょう」
にこにことアマネルが俺の耳元で囁いた。こいつ本当に天使なのだろうか。俺を制御したりしないで、むしろ背中を押すような言動が目立つ。
島田がシャワールームから出ていってしまったが、先に帰られてしまうと話せない。なんかもういろいろ面倒なの嫌だし、ここは折れることにした。
嫌いじゃない。むしろ好感が持てる。好きってことで、いいんじゃないのかこれ。
うん……好きなんだろうな。傍にいて欲しいってのは、多分そういうことだ。
「大体可愛いがすぎるんだよ、島田は……」
思わず独り言が漏れた。
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