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「僕は計画的にあなたに声をかけ、己の目的を遂行しようとしています。ただ、あなたの意向も無視したくはないので、もし嫌なら今は無理にプランを進めたりはしません。なんなら誓約書を作成し提示します」
「待てなんの話だ」
雲行きが若干……。
今は、ということは時期を見るということだろうか。一体何を進めようとしているんだこの男は。単なる色恋じゃないのか? それとも島田の言い方が大袈裟なだけか。言葉のチョイスの問題か。
「場所を移してもいいでしょうか? ここでは人目があるので話せません」
ちょっと怖い。
なんだろうこの急展開は。ジェットコースターに乗っているみたいな感覚だ。島田は真剣に俺を見つめ、じっと答えを待っている。
あ、島田って細いなりに……前より体出来てきたんだな。かっこいいな。年の割に硬いけど。
「俺も好き」
思わず口をついて出た短い言葉に島田は虚を衝かれたような顔をして、視線の置き場に困ったのか目をそらした。瞼のきわが少し濡れて、きらきらしている。
島田はよくわからないことも言ったけれど、それより何より俺を好きだと言ってくれた。そのことをこの場で有耶無耶にしてはいけない。
「好きだって言った」
「……はい」
「俺んち行く?」
「…………はい」
家に入れて良いのか。いや、いいよ別に。さっきまで俺から言おうとしてたんだから。天使と悪魔の姿が見えなくても、島田がすごく真剣に俺に何かを伝えたいってことはわかるから。
体がじんじんする。なんだっけこの感覚。頭の芯が痺れる感じ。
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