10話 意識的な思考回路

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 頭痛薬になんでそんなもん入ってるんだ。病院もグルなのか。いやそれはともかく、こいつ馬鹿。頭の良い馬鹿って始末に負えない。信じられない。 「えー……けして下心()()ではないんですよ?」 「下心があるのは認めるのか……」 「僕は、紡久さんが好きなんです。他の誰にもこの役割は譲りません」 「……ああ、うん」  はっきり言い切るな……まあそこはいいんだけど。でも、ふと考える。  島田が俺じゃない他の誰かを好きだったりした場合は、どうなったんだろうかと。それでも俺のために犠牲になるのか? もやもやした。 「そもそもこの薬物(ドラッグ)は主成分に性的快楽を増す効果のあるセックスドラッグとして、ある狭いコミュニティ内で出回っていました。潜在能力の増幅はあくまでも副産物で個人差はありますし、発現しない人もいます。大翔は過去あなたに、なんの説明もなく薬物(ドラッグ)を粘膜吸収で過剰摂取させました。僕はこの行為がどうしても許せず、今も大翔とは決裂中です」 「粘膜吸収って……もしかしてあの」  断片的に記憶が蘇り、俺の体の奥が変なふうに疼いた。なんで俺はそんなご無体なことされてるんだよ。粘膜……吸収。なんか嫌な予感しかしない。 「腸粘膜ですね。この経路で薬が投与されると、解毒作用のある肝臓を経由せず全身に成分が拡がります。あなたの場合、それに加えての過剰摂取」 「なんかさっきからいたたまれない……頭がんがんしてきた……そういう話まだ続くのか? 長い?」  俺とんでもない目に遭ってる。経緯はなんとか把握出来たから、置いてきぼりになる前にやめて欲しい。しかし島田ってこういう話になるとめちゃくちゃ舌の滑りがよくなるな。オタクか。……嫌なオタクだな。 「わかりました、切り上げます。必要なら文書にまとめてお渡ししますね。そんなわけで、抑制剤を紡久さんに投与出来る手段が確立出来たため、職場に潜入させて貰いました。あの会社とは裏で繋がりがあるもので、比較的容易でした。勿論きちんと仕事はさせていただいてます」 「ほんとまわりくどいんだけど」  あと文書いらない。  いや、でも突然島田が現れて抑制剤入れるからやらせろなんて言われたとして、俺は納得しただろうか。自然な感じで知り合って、少しずつ間合いを詰めていたのはこのためか。 「……ところで、さっきから言い方にひっかかるんだけど」  何か歯にものが挟まったような言い方をすることに気づいていた。何故島田は俺に投与された薬物をはっきりAMANelと断言しないんだろうかと。 「もしかして俺が過剰摂取したっていうのはAMANelとは別物なのか?」 「その通りです」 「なのに俺の中で作られているのはAMANel……って変じゃないのか」 「ああ……それは……」
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