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島田は言うか迷っているような顔をした。しかしすぐ、隠しても仕方ないと思い直したのか、続けた。
「あなたの中で自然生成しているものこそが、AMANelと名づけられた薬物だからです。創造主は紡久さんということです。そのため潜在能力の底上げは大翔の比ではなく、甚大なものになったと言えます」
「……えぇ……」
なんか、どっと疲れてきた……なんでそんなことに。望んでないんだが?
俺は深呼吸して、気持ちを切り替えようと違う視点からの疑問を口にしてみる。
「――じゃあさ。たとえば島田の、天使と悪魔……まあ思考回路? それと俺って、対話できるのかな」
「どうでしょう。でもあれは僕が意識的に作り上げた、紡久さんに見せて良い部分なので、結局は僕自身と話すのと一緒ですよ」
「……あれ、島田が判断したうえで、あんなにはっちゃけてるのか? かなりきわどいとこ攻めてたぞ」
無意識ならともかく、あれにGOサインを出している島田、ちょっとどうかと思う。俺がドン引きするとか思わないのか。
「僕が普通にしてたらとっつきにくいでしょう。意識的なものです。わりとコントロール出来るものですよ」
「――え、童貞がどうとかいうのも意識的に……?!」
その部分こそ割愛すべきでは? 別に童貞が悪いって言ってるんじゃないけど、ほら隠したいものじゃん、そういうセンシティブな情報はさ。無駄に見栄張りたいものじゃん男の子。
「薬剤を注入する注射器が他の人に使用済みというのもおかしな話では?」
こいつ、真顔で……。
あ、そうだった。気になることが。
「そういやそれ……俺に中出しする気満々に聞こえるんだけど。そういうの……なんか苦手というか」
その行為にもの凄い抵抗があった。はっきりとは覚えていないが、多分過去の経験からだと思う。……中に出されなけりゃいいのか?
「そこは、まあ、言われるかもと思ったので……一応……準備はしてます」
急に歯切れが悪くなるな。一応ってなんだよ。
「だけどそれだと目的達成にならないんじゃ?」
「うーん、まあ。大丈夫です……手間ですけど」
手間ってなんだよ。いや……そうじゃない。そういうことではない。
「やっぱそれ以前の問題だ。……俺は拒否する」
心の中に、さっきから感じているもやもやしたものが募ってゆく。
こんなことで島田としたくない。
「問題点を挙げてくれれば改善策を練ります」
「だから……俺は好きなやつと、したいからするの。抑制効果がどうのとか、そういう目的でしたくない」
思いもよらぬことを言われたのか、島田は腕組みをしてうーんと唸った。
「僕は好きでもない男の人を抱けるほど酔狂ではないんですが。紡久さん以外にこんな提案してませんよ? そもそもあなたに特化してますし」
「そういうことじゃない。わかんないかな」
もどかしくなって、少し語調が荒くなる。何故伝わらないのだろう。
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