10話 意識的な思考回路

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 島田は言うか迷っているような顔をした。しかしすぐ、隠しても仕方ないと思い直したのか、続けた。 「あなたの中で自然生成しているものこそが、AMANelと名づけられた薬物(ドラッグ)だからです。創造主は紡久さんということです。そのため潜在能力の底上げは大翔の比ではなく、甚大なものになったと言えます」 「……えぇ……」  なんか、どっと疲れてきた……なんでそんなことに。望んでないんだが?  俺は深呼吸して、気持ちを切り替えようと違う視点からの疑問を口にしてみる。 「――じゃあさ。たとえば島田の、天使と悪魔……まあ思考回路? それと俺って、対話できるのかな」 「どうでしょう。でもあれは僕が意識的に作り上げた、紡久さんに見せて良い部分なので、結局は僕自身と話すのと一緒ですよ」 「……あれ、島田が判断したうえで、あんなにはっちゃけてるのか? かなりきわどいとこ攻めてたぞ」  無意識ならともかく、あれにGOサインを出している島田、ちょっとどうかと思う。俺がドン引きするとか思わないのか。 「僕が普通にしてたらとっつきにくいでしょう。意識的なものです。わりとコントロール出来るものですよ」 「――え、童貞がどうとかいうのも意識的に……?!」  その部分こそ割愛すべきでは? 別に童貞が悪いって言ってるんじゃないけど、ほら隠したいものじゃん、そういうセンシティブな情報はさ。無駄に見栄張りたいものじゃん男の子。 「薬剤を注入する注射器(シリンジ)が他の人に使用済みというのもおかしな話では?」  こいつ、真顔で……。  あ、そうだった。気になることが。 「そういやそれ……俺に中出しする気満々に聞こえるんだけど。そういうの……なんか苦手というか」  その行為にもの凄い抵抗があった。はっきりとは覚えていないが、多分過去の経験からだと思う。……中に出されなけりゃいいのか? 「そこは、まあ、言われるかもと思ったので……一応……準備はしてます」  急に歯切れが悪くなるな。一応ってなんだよ。 「だけどそれだと目的達成にならないんじゃ?」 「うーん、まあ。大丈夫です……手間ですけど」  手間ってなんだよ。いや……そうじゃない。そういうことではない。 「やっぱそれ以前の問題だ。……俺は拒否する」  心の中に、さっきから感じているもやもやしたものが募ってゆく。  こんなことで島田としたくない。 「問題点を挙げてくれれば改善策を練ります」 「だから……俺は好きなやつと、したいからするの。抑制効果がどうのとか、そういう目的でしたくない」  思いもよらぬことを言われたのか、島田は腕組みをしてうーんと唸った。 「僕は好きでもない男の人を抱けるほど酔狂ではないんですが。紡久さん以外にこんな提案してませんよ? そもそもあなたに特化してますし」 「そういうことじゃない。わかんないかな」  もどかしくなって、少し語調が荒くなる。何故伝わらないのだろう。
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