1話 天使と悪魔

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 二人のやりとりを聞かされているうちに、俺の口の中はすっかりカレーになってしまった。確かに麺類多すぎなのは認めよう。  よし、今日のランチはナン絶品キーマカレーに決定。 「アマネル、おまえオレのこと好きすぎだろ。何かってぇと意見丸被りで」 「あなたこそ私のこと大好きですよね? 知ってますよグレネリ。私を想いながら悶々と過ごす夜の数を。言ってくれれば(やぶさ)かではありませんのに」 「マジかよ! やりぃ」 「おや否定もせずに素直な反応。グレネリは本当に可愛らしい悪魔ですね」  アマネルは天使の微笑を浮かべながら、グレネリをうっとりと見つめた。  俺についている天使と悪魔、このように非常に仲が良い。意見が真っ向からぶつかることなんてそうそうない。あまりにも仲が良すぎて、付き合ってんのかこいつら、いやまだ付き合ってないのかこいつら、早く進展しちゃえよ。その場合どっちが……なんて。いや、いかんいかん。真っ昼間からこんな妄想は良くない。  ほら、こんなこと考えてるから周りの変な葛藤が混入してきた。 「天使ちゃん、結城主任ウリエルくん見てたよね、恋かな? 恋だよね?」 「あんまり三次元で妄想しちゃ駄目よ悪魔ちゃん。失礼じゃない」  よく俺に対して妄想という名の葛藤をぶちまけてくる同じ部署の小野さん。実際にではなく、彼女の天使と悪魔だからまあ多目に見てるけど……ううむ。何を勝手に恋にしているのか。変に意識してしまったらどうするのだ。 「あの二人だったらどっちが受けかな? やっぱ結城主任しか勝たんか」 「結城主任て筋肉が正義みたいな感じじゃない。攻めだよ。ウリエルくんのが高身長だからって、決めつけちゃ駄目」 「全然わかってないな天使ちゃん……身長差は二の次。あの細マッチョがエロいんだよ。あれは脱がしたら凄いぞ? ……あーでも確かにウリエルくんが受けでもいいかもね。めっちゃ迷う」  やっぱり俺で勝手な妄想するな。受けとか攻めとか付き合っているわけでもないのに……。  いや、俺もさっき似たようなことを……人のこと言えない。ちょっと反省したので今回は許す。
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