10話 意識的な思考回路

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「それって一回で終わる話なのか。それとも今後も定期的に行われるのか。もし後者なら、俺はますます嫌だ。島田に依存する気はない」 「紡久さんの体内でAMANelが自然生成されている限り、ずっとです。そしてこれは依存ではありません。定期検診と思って」  病気かな俺は……。  そういや以前サンプルの回収と修復の研修に行ったと言っていたがあれはもしかして俺に関連することなのか。なんだか気持ちがパンクしそうになってきて、無駄に苛々してくる。  こんなふうに、言い合いをしたいわけではないのに。 「好きなうちはまだいい。お互い煩わしくなった時どうする? 俺はおまえの顔色伺って付き合っていく気はない。もっと普通に……」 「どうしても無理なら代替案を出すと言いました」 「代替案てなんだよ」 「僕とするのは……駄目ですか? それが一番の近道なんです」 「……断る」  島田は俺の態度にため息をついて「わかりました」と頷いた。  自分でもわかっている。俺が言っていることはとても感情的で、見苦しい。ヒステリーかよ。だけど止まらないのだ。いかん泣きそう。 「これならどうですか」  急に腕を引かれて、床にごろりと転がる形になった。 「――おおぃ」 「ものは試しにキスしましょう」 「ものは試し……!?」  お気軽な言い方に拒否反応を示したが、島田は不機嫌になっている俺に怒りを見せるでもなく、終始穏やかな表情だった。こいつ、本当に俺より年下か。(よわい)二十一の童貞なのか。 「好きだからです。紡久さんだから言っています。だから、落ち着いて。許可をください」 「許可……」  許可ってなんだよ。勝手にキスでもなんでもしたらいいだろうが。 「同意のない性交渉はしないと言ったでしょう。キスもそれに準じます。いいですか?」  なんでこいつこんなに大人びてるんだ。くそ、俺が駄々こねてるだけみたいになってて、なんだか嫌だ。みっともない。 「…………どうぞ……」  消え入るような声の俺に、島田は少し照れたような顔で微笑んだ。  好き。この顔好きだ。造りがどうのじゃなくて、俺に向けてくれるこの表情が好きなのだ。  島田の琥珀色の瞳の中に俺が映っていた。  島田の唇がやわらかく触れたので、俺は思わず瞼を伏せた。
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