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大翔さんたちの両親は忙しくしていて日本にはいないらしく、大きな家で兄弟二人になるようだ。前に訪れた時にもちらりと顔を合わせたが、その時は言葉を交わさなかった。
「名前はなんていうの。大翔さんに似てるね」
とてもきれいな子だ。年齢的には中学生くらいでも、頭の出来が良くもっと先の勉強をしているのだと聞いた。
「大和だよ。ミドルネームはウリエル……僕よりメジャーな天使の名前だから、聞いたことあるかもね」
「大和のが呼びやすい」
「でも今は大和じゃなく僕のことをちゃんと見て? 見てくれないとお仕置きするよ。どんなお仕置きがいいかなあ」
冗談なのか本気なのかわからないけど、大翔さんが嫉妬してるのはわかった。俺が大和と気が合って、楽しそうにしていたから拗ねたのだ。
もしかして大翔さんは、自分の弟に対して劣等感を抱いているのだろうか? 容姿のよく似た歳の離れた兄弟。天使の名前。才能の有無。そんなものに。
「……ごめん。見てる」
悪い、大和。またあとで話そう。
大和とは大翔さんの目の届かないところで、たまに会って話したり遊んだりした。これは秘密だ。
✢ ✢ ✢
「紡久さん、こっち」
大翔さんのいないところで大和に会うのは、秘密の逢瀬のような気がしてわくわくした。成長途中にある大和は、会うたびどんどん身長が伸びて、近いうちには俺を追い越しそうな勢いだった。
「大和またでかくなったんじゃないか。身長いくつになった?」
「五・七フィート!」
「フィートで表すな。わかんね」
「最終的には六フィートって答えたいから、それまで待ってて、紡久さん。また僕に身長いくつって聞いてね」
「はは、なんだろなそのこだわりは」
「大翔が大体それくらいあるから、抜かしたくて」
「お、ライバルなのか? じゃあ俺はいくつ」
「うーん五・八くらい? もうちょっとで抜かしちゃう。ごめんね紡久さん」
あんまりにょきにょき伸びるなよ……でも大翔さんもでかいし、遺伝子の仕業かもな。可愛いな、大和。好き。
「大和、俺と会って楽しい?」
「うん、紡久さん大好きだし。……ところで、大翔にひどい扱いされてない? あの人ちょっと変わってきたなと思って……僕の口出すことじゃないのかもだけど」
「え、なんで」
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