12話 天使の名前

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 大翔さんたちの両親は忙しくしていて日本にはいないらしく、大きな家で兄弟二人になるようだ。前に訪れた時にもちらりと顔を合わせたが、その時は言葉を交わさなかった。 「名前はなんていうの。大翔さんに似てるね」  とてもきれいな子だ。年齢的には中学生くらいでも、頭の出来が良くもっと先の勉強をしているのだと聞いた。 「大和(やまと)だよ。ミドルネームはウリエル……僕よりメジャーな天使の名前だから、聞いたことあるかもね」 「大和のが呼びやすい」 「でも今は大和じゃなく僕のことをちゃんと見て? 見てくれないとお仕置きするよ。どんなお仕置きがいいかなあ」  冗談なのか本気なのかわからないけど、大翔さんが嫉妬してるのはわかった。俺が大和と気が合って、楽しそうにしていたから拗ねたのだ。  もしかして大翔さんは、自分の弟に対して劣等感(コンプレックス)を抱いているのだろうか? 容姿のよく似た歳の離れた兄弟。天使の名前。才能の有無。そんなものに。 「……ごめん。見てる」  悪い、大和。またあとで話そう。  大和とは大翔さんの目の届かないところで、たまに会って話したり遊んだりした。これは秘密だ。    ✢ ✢ ✢ 「紡久さん、こっち」  大翔さんのいないところで大和に会うのは、秘密の逢瀬のような気がしてわくわくした。成長途中にある大和は、会うたびどんどん身長が伸びて、近いうちには俺を追い越しそうな勢いだった。 「大和またでかくなったんじゃないか。身長いくつになった?」 「五・七フィート!」 「フィートで表すな。わかんね」 「最終的には六フィートって答えたいから、それまで待ってて、紡久さん。また僕に身長いくつって聞いてね」 「はは、なんだろなそのこだわりは」 「大翔が大体それくらいあるから、抜かしたくて」 「お、ライバルなのか? じゃあ俺はいくつ」 「うーん五・八くらい? もうちょっとで抜かしちゃう。ごめんね紡久さん」  あんまりにょきにょき伸びるなよ……でも大翔さんもでかいし、遺伝子の仕業かもな。可愛いな、大和。好き。 「大和、俺と会って楽しい?」 「うん、紡久さん大好きだし。……ところで、大翔にひどい扱いされてない? あの人ちょっと変わってきたなと思って……僕の口出すことじゃないのかもだけど」 「え、なんで」
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