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「……友達から紹介されたとかいう、よくわからない薬……飲んでるみたいなんだ。だけどネットで検索してもヒットしないんだよね。で、ちょっと大翔に内緒でそれの成分調べたら、納得行かない部分が」
「成分……え、そんなの見るのか大和」
なんか小難しい話になってきた? 成分なんて気にしたことない。
「多分自己肯定感……あと、……性欲とか、気持ちいい感覚が上昇する……のかなって。まだよくわかんないことも正直あるけど」
「――怪しいってことか?」
「気をつけてね、紡久さん。それ飲んでって言われても絶対に飲まないで。……大翔は僕の言うとこ取り合わないから。だけど変わってきたのってそれからのような気がする」
確かに大翔さんは少しずつ変わってきた。作る音楽にしたって、以前よりだいぶ垢抜けて、認められるようになってきた。喜ぶべきことではあったが、俺には前の大翔さんのほうが良かった。……なんて、言えないけど。
変化は悪いことじゃない、はず。
「でさ……大翔の部屋の前でたまたま聞いちゃったんだけど。紡久さんの……あれ……無理なことされてない?」
「ムリナコト」
思わずカタコトになってしまった。まずい。こんな少年に濃厚な関係を察知されては、健全な育成に関わるのではないか。
「大翔とエッチなことしてんの、紡久さん」
「――いやあの」
「合意ならいいけど……嫌なら嫌って言ったほうがいいよ。僕ならちゃんと相手のこと一番に考える。……好きな人は大切にしたいものでしょ?」
既に察知されていた、ようだ。しかもなんか冷静に言われてしまい、俺としては立場がない。
……無理なこと。
確かに少しずつ、行為がエスカレートしてきている気はした。どこで大翔さんのタガが外れたのだろう。俺にはわからなかった。その怪しげな薬のせいなのか。
このままだと、俺と大翔さんの関係はどこまでいってしまうのか、ぼんやりとした不安がある。
一緒にいて心地良い関係でありたい。それなのに大翔さんは変わってゆく。せめてそれが良い方向にだったら良かった。
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