13話 紅煉《グレネリ》

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「紡久。紡久……可愛いね……こんなになって。大好きだよ。……ああ、すごい……フレーズがどんどん溢れてくる。紡久の中に僕の理想の答えがある」  その目はどこか違うところを見ている気がしたが、俺自身余裕がなさすぎてそれどころではなかった。  大翔さんの出した熱いもので俺がいっぱいになって、事前に入れられていた何かと混じり合う。受け止め切れず、俺の中から混沌が溢れてくる。以前とは段違いの快楽あるいは苦痛に俺は怯え、そして溺れた。  二度と戻れなくなる。これはどうしようもなく危険な代物だ。  人でいられなくなる。 「もう一度この前の試させて。もっと脚を、そう。力抜いて全部受け入れて。大丈夫。紡久はえらいね。上手だよ」 「……苦しい。これは、なに。何を、入れたのこれ……嫌だ」  嫌だと言いつつも先日の鮮烈な感覚が俺の判断能力を奪い、本気では抵抗出来ない。口先だけの拒否が大翔さんに受け入れられるはずもなく、俺は繰り返し犯されるように抱かれた。 「気持ち良くなるおまじないだよ。紡久……今、どんな感じ?」  体を揺さぶられ、入れられた何かが俺の中で拡散する。全身に回って俺を侵食してゆくこの感覚は一体なんだ。食われる。俺が俺でなくなる。他人との境界線がわからなくなる。 「駄目だよ。駄目……おかしい。壊れる。壊れる。壊れる。なにかすごく変な感じが……頭が割れる……おかしくなる……」  ――やめて大翔さん。限界だ。  がつん、と重たい音がした。何かがドアにぶつかったような音には怒りが見え隠れしていた。 「大和、随分帰ってくるのが遅かったなあ。おまえの大好きな紡久は、こんなに僕のでいっぱいになってるよ」  今……なんて……? 「これは紡久が僕のものっていう証明だよ。二人とも、理解出来た?」  大和がベッドの傍で立ち尽くしていた。ドアを殴りつけたのは大和だったのか。いつ来たのかわからなかったけれど、大翔さんの言葉から察するにわざわざこうなるよう仕組んだのだ。なんで……こんなの……。 「あの変な薬、紡久さんに飲ませたのか……大翔」  大和の声は怒りに満ちていた。こんな声聞いたことない。いつも可愛くて俺に笑いかける大和が、怒っている。 「飲ませた……っていうかな。紡久の()()……体の奥のほうに、直接入れてあげたんだよ。こんなに蕩けて、僕のすべてを飲み込んでる」 
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