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大翔さん……大翔さん……もうやめてくれ。
「ほらもっと、見せてあげたら」
「紡久さんを変なことに巻き込むなよ……! 一人でやれよ!」
大翔さんが俺の脚を開かせて、繋がっているところが見えるようにわざと体勢を変えた。体の中を抉るようにされて俺はわけがわからない声を上げる。大和の目の前でこんなことされて、羞恥心や怒り、絶望、己の不甲斐なさが綯い交ぜになる。さっきまで怒鳴っていた大和はびっくりしたように目を見開き、体は硬直していた。
すごいよ紡久、こんな感覚は他では得られない。ああもう何がどうなっても良いからこのまま君を喰らい尽くしたい。駄目だ自分の欲望のために紡久を薬漬けにするなんて人道に反する今からでも遅くないからやめよう。いやもう遅いよ紡久は僕のものだ明らかに過剰摂取こんなに気持ちの良い蜜を他の誰にも……。
――大和になど渡すものか。
大翔さんの意識が流れ込んでくる。なんだこれは。独占、支配、快楽、軋轢、音の洪水、大翔さんの思考回路が濁流のように俺を飲み込み殺そうとする。紅く煉られた臓器の闇がどくどくと蠢きすべてを飲み込む。
そこから先は、記憶が途切れている。
✢ ✢ ✢
目が覚めたら俺は隔離病棟のようなところで、手足を拘束されていた。
いや……まさにここは隔離病棟なのだろう。何かの実験動物、あるいは狂暴で手に負えない患者のように、自分の体が希望通りにならない不自由な生活がしばらく続いた。想像を絶する地獄のような日々だ。
うなじを切開され、皮下に何かを埋め込まれる。全身を検査され、血を抜かれ、体液を採取されて、俺は数値と化す。なんの実験だかわからないものに体を差し出し、何日、何週間、何ヶ月……時間の流れがまったくわからない状況で俺は苦痛と孤独と屈辱に耐えるしかなかった。どうしてこのようなことになったのか、経緯がわからない。記憶が抜け落ちているのだろうか。
大翔さんの幻が俺を犯す。何度も何度も貫かれわけがわからなくなる。大和、大和、大和……ごめん嫌なものを見せてしまったよな俺のこと嫌いになったかな。
俺が大和と仲良くならなければ。
大和の頭の出来がもう少し普通だったなら。
すべては大翔さんの、大和への嫉妬から生じた歪みなのか。今となってはどうすることも出来ない。もしもの話は、気休めにもならない。
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