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2話 丁寧な男
キーマカレーを注文し適当に空いている席についてしばらくすると、さんざん迷って結局からあげ定食を選んだ島田が俺の隣に座ってきたので驚いた。
「お隣失礼します」
「――どうぞ。からあげ定食か。旨そうだな」
若いのに礼儀正しいな、なんて考えるのは年だろうか。俺は二十六になるが、島田は多分俺よりいくつか年下だ。他の席も空いているのに、何故俺の隣を選んだのだろう。
少し離れたところで、「ウリエルくんと結城主任が一緒にいる」とか「二人並ぶと更に目立つね」とか小さな囁きが聞こえてくる。俺も捨てたもんじゃないらしい。
けれど基本的に俺は、なかなか誰かと必要以上に仲良くはなれない。その人の持つ葛藤が丸見えで、俺には隠しおおせないからだ。それを後ろめたく、また煩わしく感じてしまう相手と深く付き合うことが出来ないでいた。
こんなことではいつまで経っても独り身だし、嫌なのだが……。
この能力を有効活用出来るとすればなんだろう。産業スパイとか……軍事目的……いやいや何不穏なこと考えてる。いいんだ俺はせいぜい人の昼食の悩みでも眺めてるから。
「からあげの魅力に抗えませんでした」
くだらないことを考えていたら、島田が現実に引き戻してくれた。
「ここのからあげ旨いよな」
「そうですね。どうしても好きなものに偏ります。近頃運動不足なので、気をつけたいんですけど」
俺には島田の天使と悪魔が見えているが、本人には見えていない。島田の天使がいくら注意喚起しても、その耳には言葉として届かないだろう。
間近で見ると、島田のエキゾチックな美しさに圧倒される。日本人離れしているものの、がっつり彫りが深いというわけでもなく程よい加減。瞳は宝石みたいだし、髪もきらきらしている。この色素の薄い配色だと色白の肌のような気もするのだが、あえての小麦色。焼いているのか? 何にせよファッション雑誌の表紙が飾れそうだ。広告塔にでも使ったほうが良いのでは? 人事、何やってる。
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