14話 傍観と思惑

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「結城にプライバシーなんてないよ。監視対象だもん。それは島田も知ってるでしょ」  佐野の声に冷ややかさが混じった。島田も監視対象という言葉に押し黙る。重々わかっているのだろう。 「まあ俺は、結城に入ってる生体モニタが異常値示してたから、やば死ぬ? と思って急遽様子見に来ただけなんだ。結城ここんとこ頭痛ひどい日が多いし、ほんと早いとこ投与したほうがいい。今日の佐野くん占い」  佐野が俺のうなじをまた撫でる。皮下に何か入れられているらしいが、外からはわからない。 「すぐ傍に住んでますよね」 「二つ隣に部屋借りてる。結城には秘密だよ。フットワーク軽いっしょ?」 「異常値って……大丈夫なんですか?」  島田の声は相変わらず硬かったが、その中に俺を心配する不安な色が見えた。  佐野は「今は平気みたい」と自分のスマートウォッチのようなものを確認する。そこに俺のモニタリング情報が出ていた。数値は落ち着いているようだ。 「少し様子見してやって。結城、体は丈夫そうだし、風邪引かなきゃまあ」  佐野の口調はとても軽く、何気ない日常会話をしているようにも聞こえた。 「結城さんを監視してたって何も起こりませんよ。力を悪用しようとか、この人は一切考えてないから。佐野さんだってずっと監視してきたならそれくらいわかるのでは」 「そういうのは上が決めることだし、護衛も兼ねてる。俺は与えられたお仕事こなすだけの歯車だよ。……お、なんだその目は。こんなチビに何が出来るんだってか」 「何も言ってませんけど」  確かに佐野は小さいが、動きが俊敏ではある。気づくと俺の傍にいたりする。もしかしたら知らず守られていることも、これまでにあったのだろうか。佐野は少し不機嫌そうにしていたがすぐに気を取り直した。 「ともかく、早く最後まできっちりしちゃってね? そのほうが結城にとって……いいんだ」 「そこに佐野さんの私情は含まれますか」  佐野は質問には答えず、ローテーブルに乗っていた缶ビールに口をつけた。 「あ、もうないなぁ」 「そもそもあなたは何故結城さんの傍にいられる? 何故バレないんです」  島田の疑問は尤もだ。何故佐野の思考回路は読めないのだろうか。単に迷いがないだけか。 「なんか知らないけど、俺の考えは見えてないみたいよ。……うーん、もう撤退していい? 結城が目ぇ覚ます前に。俺もう島田と話すことないや」  不自然な笑みを浮かべながら、佐野は立ち上がった。 「どうしても気になるなら、ベッドの下についてるやつだけ外してもいいよ。気になって萎えられても困るから」
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