14話 傍観と思惑

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 佐野はそれだけ言うと階段を下りていった。  島田の顔がものすごく嫌そうに歪んでいたが、俺は眠りの中にいたのでわからなかった。      ✢ ✢ ✢ 「なあなあさっきのどうだった? オレかっこよかったかな。それっぽかった?」  グレネリはぺろりと自分の唇を舐め、悪そうな顔を作った。 「ええ。厨二病みたいで良かったですよ。ふふ、本当にグレネリは可愛らしいですね。悪戯が過ぎますが」  先程地獄の門を開くと言った悪魔グレネリは、悪びれもせずアマネルに笑いかける。 「やー、まあ契約はほんとだし? 条件揃ったら発動するよな。大和いるし、大丈夫だろ多分! 見切り発車だけど」 「佐野さんはどうします?」 「盗聴器は別に問題ないよ。あれほんと佐野が危機管理するだけのもんだし。そもそも結城の首んとこ入ってるやつで、常にいろんな情報が監視されてる」 「いえ……佐野さんの心が見えないように、結城さんに制限をかけてるでしょう?」 「佐野が考えてることわかったら、結城疲れるだろ。任務に支障が出るから、そこはいいんだ」  グレネリは相変わらず悪気がなさそうに屈託なく笑う。 「結城が日常生活を送るための条件はいくつかある。AMANel生成に全面的に協力……これは結城が外に出た時点で既にクリアしてる。結城の体を離れ、勝手に増殖してるからな。こればかりは仕方ない。利用方法はオレの知ったこっちゃないが、あいつはもう生成に関わる必要がない。あとは生成主である結城の処遇。  オレが結城の力を制御する、つまり可視化対象の大幅縮小。護衛兼監視をつける、これは佐野の他にも何人かいる。日本国外には出られない。定期的にゲノム情報を提供する。抗AMANel薬の投与……今となっては結城の能力は抑えておきたいからな。だがこれは何故かうまくいかなかった。多分結城が快楽に溺れてる時、直接体内にぶち込まんと効かんやつ。大和がそれにやっと気づいて今に至る」 「そういえばグレネリ。結城さんに呪いなんてかけてたんですね?」 「別に大和を必ず好きになる呪いじゃねえぞ? 再会するまでは誰も好きにならないってだけの話で」 「……ふうん? 大和くんにチャンスを与えるためでしょうか?」 「どうとでも取れよ」  しらばっくれるグレネリを尻目に、アマネルはため息を吐いた。 「でも……抑制剤効いちゃったら、私たちの声は結城さんに届きませんねえ」 「それが普通だろ。そもそもオレたちが消えるわけじゃない」  アマネルは微笑み、グレネリの唇にそっと指を添えた。
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