16話 ゆらぎ

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「冷凍しといた抑制剤……まあ詰まるところ僕の精液なんですけど。無事解凍出来ましたので、このぬるぬるしたやつ、医療用ジェルとよく混ぜます。挿入時に使いますので、紡久さんが苦手な中に出される感は薄まるかと。僕はちゃんとゴムつけますから、それでいいですよね?」 「淡々と説明するなよ。頭ちゃんと仕事してるじゃないか」 「インフォームドコンセントの観点から……ごめんなさい。説明やめます」  手間ってこのことか。確かに少し手間だな。それよりこのために自分の精液を抜いて冷凍している大和の姿を想像してしまい、不謹慎かもしれないが笑ってしまった。そちらのほうが更に手間がかかってそうだ。 「あれ、もしかしてだけど。その混ぜたやつだけ中に入れたら事足りるんじゃ」  しかし大和は、そう言われることを予測していたのか即答した。 「もしそうだとしても僕が嫌です。それにこれは、紡久さんがちゃんと気持ち良くなってる時でないと、本領発揮しないので」 「あ、そう……なんだ。責任重大だな」 「そう僕は責任重大なので……尽力します。だから紡久さんは、僕に遠慮なくいっぱい気持ち良くなってください。――脚、開きますよ」 「……う」  大和の指が俺の中に入り込んできた。さっき作ったばかりの抑制剤入りジェルがぬるりと体の中をかき混ぜる。久しぶりすぎる感覚に皮膚が粟立った。一体何年ぶりなのだ。実質初めてと言ってしまっても良いくらいの空白。ゆっくりと息を吐いて、やり過ごす。 「きついです……?」 「なんか変な感じ……するけど……大丈夫だよ。鍛えてるからな」 「()()も鍛えてるんですか」  そんなわけねえだろ、俺の強がりだ。やがて抑制剤のせいか体全体が大和に包まれているような感覚に囚われて、熱くなってきた。  大和が欲しくてずきずきと疼く。それでも俺に欲情している大和の凶器みたいなもんを見て、大丈夫かな……なんて心が揺らいだ。受け入れる俺の身にもなれよな……ほんと。なにあれ……めっちゃエロい。  ふと過去抱かれた大翔さんの残像が脳裏をよぎり、ぞわりとした。違う。これは大翔さんではありえない。しっかりと目を開けて大和を見る。  全然似ていない。造りは似ているけど、まったくの別人だ。今俺の目の前にいるのは、大和だ。 「間違ったことしたら……すぐ教えてくださいね。なにぶん、初めてなので」  大和がゆっくりと俺の中に入ってきた。圧迫感に体が痺れる。呼吸のリズムがわからなくなる。脳が熱に支配される。大和、大和と馬鹿みたいに繰り返すだけで、もう意味のあることは考えられなくなった。
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