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「島田……いや、大和! 年上の細マッチョはいいぞ? 結城は結構イケメンだし、いい体だぜ。付き合ったら雄っぱい触れるし。オレのオススメ物件だ」
聞こえていないのを良いことに、悪魔グレネリがわけのわからないことをアピールし始めた。雄っぱいってなんだよ。大胸筋と言え。そして大和呼び。俺が苗字で呼んでんのに……。
「餌付けして大和くんのハートを鷲掴みしようとするとか、侮れないなあ結城さん」
アマネルまで余計なことを口出ししてくる。余計なお世話だしそんなつもりはない。黙っていて欲しい。
「大和くんはあなたの隣をわざわざ選んで座ってくれてるんです。これはもしや恋のアタックチャンスでは? 行っちゃいましょうよ♡」
「向こうは絶対結城と仲良くなりたいんだよ。可愛いじゃないか年下男子。ああいう丁寧な奴ほど、意外とベッドじゃギャップに悶えたりするもんだぞ。さくっと一発キメとけ。筋肉はおまえを裏切らない」
佐野にしてもこいつらにしても、一体何を根拠にものを言っているんだ。
しかしベッドでの島田……もやもやと想像してしまう。しっとりと汗の浮かんだスレンダーな小麦色の肌、なかなかに破壊力がある。まずい何を考えているんだ俺は。いけない。
「では私も早速今夜グレネリをいただきましょうかね」
「は! 何言ってやがる。オレがアマネルを美味しくいただくんだ。覚悟しとけよ」
「いえここは私が」
何だこいつら。既にデキ上がっているのか? そしてどちらが攻めるとかで揉めているのか? くそ、羨ましいな。
……そうか。
羨ましいのか俺は。やはり新たな出会いが欲しいのか。いや欲しいよ欲しいに決まってる。だって俺まだ血気盛んな二十代。三大欲求のうちのひとつ、性欲だって勿論ある。だからと言って誰でも良いわけではない……のだが。
一方島田の天使と悪魔ペアは、俺を値踏みするように意見を出し合っていた。こいつらって、島田本人と比べるとだいぶはっちゃけているというか……。こういうのもギャップで面白い。しかし会話の内容に俺は打ちのめされた。
「折角自然な感じに紡久さんと知り合えたんだから、それを上手く活用しろよ。デートに誘え。惚れさせろ。大丈夫、ウリエルおまえなら最後までイケる。めくるめく快楽の世界に堕ちてこい」
紡久さん、という言葉にぶわっと変な汗が出た。
向こうは前から俺を認識していた? そして自然な感じに知り合えた? もしかしてこれは意図的な出会いだったのか。なんでだ。
まったくわからなくて頭の中が混乱する。
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