君の想い

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「…え?」 「自覚したのは高1だけど、中学の頃 テスト前に一緒に勉強してたあの頃からずっと大和が好きだ。オルゴールをもらったあの日も、そして今も。大和が好きだ。」 「…っ」 「ごめん。俺、あの曲今日まで知らなかったんだ。大和にCDまで借りてたのに。だから、大和の気持ちに気付けなかった。ずっと俺の片想いだと思ってたんだ。」 「あの日『ごめん』って言ったのは…?」 「お土産準備してなくてごめん、かな。学食奢る約束したのは大和と会う口実。そうでもしないとなかなか会えないし…。」 「なんだよそれ…学食奢ってやるから諦めろってことかと。だから誘われても断って…距離も置いていたんだ。」 「諦めろなんて!!俺こそ大和に片想いしたって叶わないから諦めようと思っても諦められなくて。1人で抱える分にはいいだろうって、もらったオルゴールと一緒にずっと大事にしてきたんだ。」 俺の言葉に、嘘でしょ、夢かな、なんて言って顔を赤くする大和。 目を見てもう一度伝える。 「本当だよ。大和が好き。友達じゃなくて恋人にしてほしい。」 大勢の人が行き交う駅前での告白。 オルゴールで告白してくれた大和とは大違いだ。 ロマンチックの欠片もない。 けれど、大和はそんな場面さえ華やかな景色に変えてしまうような王子様の笑顔を向けてくれた。 「ありがとう。俺を恋人にしてくれて。」 少し早い春の風が俺達を優しく包み込んだ気がした。 2人の世界に浸っていると、矢吹と内山から連絡が入った。 2人とも心配してくれていたらしい。 「そういえば、矢吹と内山になんて言おう?矢吹は俺たちが喧嘩してると思ってるよ。」 心配してくれていた彼に「両片想いですれ違ってました」なんて言ったらどう思われるだろうか。 「喧嘩?『両想いになりました』でいいんじゃない?矢吹も内山も俺が蒼翔のこと好きなのとっくに知ってる。」 「え!!?いつから!?」  「中学生の頃からかな?あいつら弄ってくるんだよね。修学旅行の後は『お前フラれたのか?』って傷口開いてくるし。」 「まじか…え、じゃあ大和の気持ちに気付いてなかったのって俺だけ?」  「んーまあそうなるのかな。俺、結構露骨にアピールしてたし。」  嘘だろ、片想いの相手からアピールされてたのに気付けない俺って… 「今度はちゃんと蒼翔に伝わるように言葉にしていくから。」 「俺も、俺だって、この先ずっとこの世界のありとあらゆるものを使って大和が好きだって伝え続けるから覚悟してろよ。」 「なんか…プロポーズみたいで照れる。」 「は!?そんなつもりじゃ」 「ずっと一緒にいてくれないの?」 「っ!!ずっと…ぃ…っしょに決まってるだろ!!」 2人で顔を赤く染めながら歩く帰り道。 俺の右手には通学バッグと卒業式でもらった花。 左手には俺よりも少し冷たい大和の右手。 友達のままでいられるなら この想いはオルゴールとともに自分だけの一生の宝物にしようと思ってた。 でも、 君がくれたオルゴールのように この世界には想いを育てる術が、想いを伝える術がたくさんあるって気付いたから。 今度は俺が君に贈るよ。この想いをのせて。 「大和がくれたあのオルゴールの曲、俺の名前が入ってるんだな。」 「うん。曲名どおり、蒼翔といるとあの曲が頭の中で流れていたんだ。ぴったりでしょ。」 「「 ハルノオト 」」 ----- fin
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