君の想い

3/4
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
最寄駅の改札を出て、ひさしぶりに大和に電話をかける。 まだこの近くにいるだろうか。 そもそも俺の電話に出てくれるだろうか。 9回目の呼び出し音。 10回目で出なかったら… 『蒼翔?』 耳元で響く愛しい人の声。 「…大和。大和、今どこにいる?」 スマートフォンから聞こえる喧騒が、俺の近くにいることを教えてくれる。 『…急にどうしたの?…今はボーリングが終わってみんなより先に駅に向か…「大和…!!」 俺の少し先にある背中。 俺の声に『え?』と言って周りを見渡す大和の背に、思い切り抱きつく。 「大和!!」 俺の衝撃になんとか耐えた大和は、何が何だか分からないといったように戸惑いを隠せずにいる。 「えっと、蒼翔?どうしてここに?」 オルゴールを貰ってからもう1年以上経ってる。 もう俺のことなんて友達とすら思ってないかもしれない。 それでも今はこの手を離したくない。 「大和…」 会ったら俺の気持ちを伝えようと思ってたのに、急に臆病になってしまって。 「…卒業、おめでとう。」 「あ、うん、ありがとう。蒼翔もおめでとう。」 「……大和が俺にくれたオルゴール、あれってどう言う意味?」 脈絡のない質問だとは分かってる。 そのまま大和の背に額を当てて抱きついていると、大和が息をのむのが分かった。 「…お土産だけど?」 「そうじゃなくて。」 「…あのオルゴールの曲、知ってるよね?」 「知ってる。」 知ったのはついさっきだけど。 「じゃああの曲を贈った俺の気持ちも分かってるだろ?なんで今更…」 抱きつく俺の手をそっと離し、大和が振り返る。 顰めた表情の大和を、じっと見つめ返す。 「…はぁ。分かった。言葉にしたら、もう友達じゃいられなくなると思ったから言わなかったのに。」 「構わない。」 俺の言葉に傷付いた表情で目を逸らす大和。 その仕草に言葉選びを間違えたと気付き「ごめん」と酷く焦れば、大和は「いや分かっていたから大丈夫」と呟く。 そして、なにかを覚悟するように深く息を吸いこみ、もう一度俺に視線を向けた。 「俺は…俺は蒼翔が好き。中学の時から蒼翔が好きだ。それは今も変わらない。でも…今日で終わりにするから。蒼翔は友達だと思ってくれてたのに、勝手に好きになって、勝手に距離を置いてごめん。わざわざここまできてくれて、俺の気持ち聞いてくれてありがとう。気を遣わせたよな。ごめんな。」 俯く大和。 違う。違うよ、大和。 気付かなくてごめん。 ズルい俺でごめん。 先に言わせてごめん。 「俺も大和が好き。ずっとずっと好きだった。」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!