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口が生クリームでいっぱいだったため、優也に代理の自己紹介を頼もうと視線を送ったが、あんぐりと口を開けて沢木を見つめていて目が合わない。
仕方なく鞄から取りだしたボールペンでナプキンに「幸貴紀」と書いて沢木に見せた。
「さち、きき?」
「みゆき、たかのり」
クリームを飲みこんで訂正したら、沢木が歯を見せて笑った。
テレビの中でも見たことのない、屈託のない子どもみたいな笑い方。
たぶんこれが、沢木の自然体。
「キキちゃん、またね」
貴紀の頭に一度大きな手のひらをぽんと乗せて、沢木は帰っていった。
名前を書いたナプキンは、沢木のダメージの酷いジーンズの尻ポケットに仕舞われた。
なんだったのだ、いったい。
「びっくりした……」
さっきまであんぐり口が開いていた優也が、沢木の姿が見えなくなった頃にぼそっと呟いた。
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