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劇団マルキノが三年ぶりに劇団員を募集する。
大々的に発表されたわけではないが、演劇に携わる者たちは皆、この情報をどこかしらから耳に入れていた。
今回のマルキノの募集は男性のみ。
年齢は十八から二十二までと若手にしぼられている。
演技・舞台経験、不問。
合格者数、未定。
審査は一次選考のビデオプロフィールの提出を含めて四回の予定。
マルキノは人気の劇団のため、まずこの一次審査で全体の四分の三が篩にかけられるとの噂を聞いたことがある。
貴紀は一次選考を通過し、今日、この二次選考の会場にやって来た。
控室に集められた候補者は、ランダムに選ばれた五人一組でオーディションを受けることになっていた。
貴紀はその最後の組に入った。
そこに、俳優の沢木央がいた。
沢木のことは、彼が子役の時代からテレビで見ていた。
世間一般では『自然体』と評されることの多い沢木の演技だが、貴紀にはその『自然体』が彼の才能と技術によって作られたものだとわかっていた。
そして沢木の実力が本物だとわかっていた貴紀でさえ、彼の生身の演技の迫力を前にして圧倒された。
「声質もいいなぁ、きみは」
求められたセリフを放った沢木の声が消えてから、しばらく続いていた沈黙を破ったのは、審査員席の中央に座っている男、丸木勇海ののほほんとしたひと言だった。
丸木は劇団マルキノ主催の演出家だ。
元々俳優をしていて、今でもたまに舞台に出演することはあるが、十年前にマルキノを旗揚げしてからは裏方と若手の育成に力を入れている。
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