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 沢木の染められた金髪とは違い、丸木はまだ四十代なのに根っこから地毛の白髪である。  肌つやの若々しさと真っ白な髪の対比が、異様なオーラを放っている。 「沢木は歌手やっても売れそうだなぁ」 「やりません」 「だろうな」  丸木はかっかっかっ、と高笑いしてペットボトルの水をひと口飲んだ。 「どうしてうちのオーディション、受けようと思ったのさ。今でも俳優としては十分活躍できてるだろう」  丸木の素朴な疑問に、沢木は戸惑う様子も見せず、好きだから、と答えた。 「本当は舞台演劇が好きなんです。テレビドラマも嫌いじゃないけど、将来的にはお客さんの目の前で生の演技をする俳優になりたいから」  同じだ、と貴紀は心の中で呟いた。  今まで歩んできた道は違うけど、沢木の夢と熱量は、自分のそれと非常に近いような気がした。  丸木が書類を指ではじきながら、まあ悪くないよねぇ、と漏らすと、彼のサイドに座っている二人の審査員もそれぞれ書類に視線を落として頷いている。  沢木の演技と審査員たちの反応を見て、彼が二次選考をすでに通過したも同然であることは、この場にいる誰の目にも明白だった。
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