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「貴紀おつかれ。どうだった? 緊張した?」  オーディション会場のあるビルの一階のコーヒーショップで、先にオーディションを終えて待っていてくれた大学の演劇サークルの同級生である村山(むらやま)優也(ゆうや)と落ち合った。 「自覚はなかったけど、緊張してたみたいだ」  セルフサービスのアイスコーヒーを、席に着くなりストローも使わず一気に飲み干す。  のどがカラカラだった。真夏のせいだけじゃない。  オーディションの最中は、できることを精一杯ぶつけることに集中していて、自分が緊張していることに気づきもしなかった。 「優也はどうだった?」 「うーん、やるだけのことはやれた、のかな……」  優也は元々の八の字眉の角度をさらに下げて、困ったように笑った。
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