あめあめ、ふれふれ、かえでちゃん

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◇◇◇  さて、少し事情(じじょう)を話さないといけません。  かえでちゃんとあたしは、この四月に、となりの県から転校してきたばかりです。  ここは、まわりを小高い山にかこまれた、小さな町の小学校です。一学年は二クラスだけ。生徒たちはみな、小さなときから近所に住んでいる顔なじみ。そこへ、あたしたちふたりが加わることになったのです。  担任の、若くてきれいな若杉(わかすぎ)先生が、 「みんな、仲よくしてあげてね」  と、口ぞえしてくれたものの、なかなかクラスに()けこむことができません。  かえでちゃんは他人におかまいなしに我が道を行くタイプだし、あたしは人見知りがはげしい。で、転校してもうひと月以上がたつというのに、ふたりはいまだにクラスで浮いてしまっているのです。  ちなみに、あたしたちはいとこ同士です。  かえでちゃんは、匹宮(ひきみや)という本家の次女です。  あたしは佐藤(さとう)奈々(なな)。あたしのお母さんが、かえでちゃんのお母さんの妹なのです。  あたしたちは、となりの県の、ここより少し小さな町に住んでいました。あたしたちの家は近所にあり、ふたりして、幼いころからいっしょに遊んだものでした。  でも、小学校四年生のおわりに事情ができて、子供のあたしたちふたりが、転校することになったのです。この町に来たのは、匹宮の親戚(しんせき)がこちらに住んでいたからです。あたしたちは、いま、その親戚の家にお世話になっています。
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