あめあめ、ふれふれ、かえでちゃん

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 親戚(しんせき)のおじさんは仕事がいそがしくて、ほとんど顔を合わせる機会がありません。  おばさんのほうは専業主婦で、ずっと家にいます。おばさんはとても親切です。ただ、「やさしい」というのとは、少し違います。どこか「冷ややかな親切」なのです。子供でも、そういう感じはわかります。 ――なんでも、遠慮(えんりょ)なく言ってね。  おばさんにそう言われても、やっぱり遠慮してしまうのです。  もうすぐ遠足で、その日はお弁当が必要になります。でも、あたしたちはどちらもお料理なんてできません。  しかたなく、恐る恐るおばさんにお願いしました。 ――そう……。  そのとき、おばさんがため息をもらすのがわかりました。  しかたないわね。心のなかで、そう言っているのが聞こえたような気がしました。  でもおばさんは、ひと呼吸したあと、すぐに笑みを浮かべ、 ――わかったわ。ごちそう、作ってあげる。  と言ってくれたのでした。  自分たちの部屋にもどったかえでちゃんとあたしは、 「気が重いね」  と言い合ったものでした。  そんなことがあったので、今日、教室で、かえでちゃんの本音がぽろりともれた、というわけなのでした。
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