あめあめ、ふれふれ、かえでちゃん

4/9
前へ
/9ページ
次へ
◇◇◇  ザーザー。  外は雨がふっています。  いまは、給食を食べおわって、教室のなかで仲のよい友だちどうしで集まり、おしゃべりタイムです。  でも今日は、本当なら、遠足に行くはずだったのです。それが雨のために中止になり、普通の授業となりました。  そのせいか、みんなのおしゃべりが、なんとなく沈んでいます。  そんななかで聞こえてきたのです。 「けっ、おもしろくねぇ」  土屋一平くんの、(とげ)のある声でした。  一平くんは続けます。 「誰かさんがよぉ、あめあめふれふれ、なんて言うもんだから、せっかくの遠足が流れちゃったぜぃ」  明らかに、かえでちゃんに聞こえるように、文句を言っているのです。体は仲間のほうに向けながら、しかめっつらをして、かえでちゃんをにらみつけています。仲間たちも、苦笑しながら、チラチラとあたしたちのことを見ています。  かえでちゃんは椅子(いす)に座ったまま、彼らから顔をそむけるようにして、 「ふんっ」  と鼻を鳴らしました。「バッカみたい。雨なんて、お天気だもん、しかたないじゃない」  それは決して声をはりあげたわけではありませんでした。そばにいるあたしにだけ聞こえるように、ボソリと言ったことでした。なのに、どうしてか、クラス中にその声が通ってしまったのです。  ザワ。  教室全体に緊張(きんちょう)が走りました。 「なにぃ?」  一平くんの顔が、怒りにゆがみました。ガタンと椅子を鳴らして立ちあがります。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加