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◇◇◇
ザーザー。
外は雨がふっています。
いまは、給食を食べおわって、教室のなかで仲のよい友だちどうしで集まり、おしゃべりタイムです。
でも今日は、本当なら、遠足に行くはずだったのです。それが雨のために中止になり、普通の授業となりました。
そのせいか、みんなのおしゃべりが、なんとなく沈んでいます。
そんななかで聞こえてきたのです。
「けっ、おもしろくねぇ」
土屋一平くんの、棘のある声でした。
一平くんは続けます。
「誰かさんがよぉ、あめあめふれふれ、なんて言うもんだから、せっかくの遠足が流れちゃったぜぃ」
明らかに、かえでちゃんに聞こえるように、文句を言っているのです。体は仲間のほうに向けながら、しかめっつらをして、かえでちゃんをにらみつけています。仲間たちも、苦笑しながら、チラチラとあたしたちのことを見ています。
かえでちゃんは椅子に座ったまま、彼らから顔をそむけるようにして、
「ふんっ」
と鼻を鳴らしました。「バッカみたい。雨なんて、お天気だもん、しかたないじゃない」
それは決して声をはりあげたわけではありませんでした。そばにいるあたしにだけ聞こえるように、ボソリと言ったことでした。なのに、どうしてか、クラス中にその声が通ってしまったのです。
ザワ。
教室全体に緊張が走りました。
「なにぃ?」
一平くんの顔が、怒りにゆがみました。ガタンと椅子を鳴らして立ちあがります。
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