あめあめ、ふれふれ、かえでちゃん

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 どうしても止めなければなりません。  かえでちゃんのお母さんから、 ――奈々ちゃん、かえでのことをよろしくお願いね。  と、くれぐれも(たの)まれているのです。  だからあたしは必死になって、一平くんの腰にしがみつきました。 「ンのやろうっ、うっせえなっ」  一平くんが身体(からだ)をひねり、あたしを突き放そうとします。  腰から手が(はな)れ、よろけます。 「だめっ、やめてっ」  あたしはなおも、今度は一平くんの(あし)にしがみつきます。 「放せってんだよぉっ」  舌打ちした一平くんに、蹴られました。でもなんとかしがみつきます。かえでちゃんのお母さんから頼まれたということもあります。それよりなにより、幼なじみの大事な友だちのためなのですから。 「くそっ、このっ、しつけえなぁっ」  一平くんの脚が乱暴に動き、()とばされます。近くの机に背中がぶつかります。とても痛い。それでも、ひざをつきながらでも、しがみつかないわけにはいきません。  かえでちゃんは、机の上に置いた手をブルブルとふるわせ、顔に怒りの笑みを貼りつけています。あたしのほうを見ないことで、何とか自分を(おさ)えているようです。  教室のみんなは、遠まきにあたしたちを見るばかり。だれも助けてくれません。  もう、だめ、と思った、そのときでした。 「あんたたち、何してるのっ」  若杉先生の大声でした。  きっと、誰かが知らせに行ってくれたのでしょう。  若杉先生が生徒たちをかきわけるようにして、あたしたちのほうへやってくるのを見て、 (ああ、助かった)  あたしはへなへなと床に倒れこんだのでした。
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