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◇◇◇
放課後になりました。
雨は少し前にやみました。空は一面の灰色の雲におおわれています。
かえでちゃんとあたしは、学校から帰るところです。濡れたアスファルトの道路を、ランドセルをしょって、歩いていきます。
かえでちゃんは、顔に、ニタニタと不気味な笑みを貼りつけています。あふれてくる怒りを、なんとか抑えつけようとしているのです。でも、ひたいに青筋が立っていて、内面の怒りはぜんぜん隠せていません。
怖いです。
あたしは一平くんに蹴られたり、机にぶつかったりして、身体のあちこちが痛いです。でもそんなことを言っている場合ではありません。急がなければ。
速足で歩いて、あたしたちは公園にやってきました。親戚の家への帰り道からは、少しはずれたところにある公園です。
そこは小さな丘のふもとです。神社があって、その敷地のなかに公園があるのです。まわりを、背の高い木が囲んでいます。ブランコや滑り台のあるところは、一応整備されていますが、そこから少し離れると、雑草がひざの高さにまで生い茂っています。
人の姿はなく、とても寂しい場所です。
ここなら大丈夫です。
こんなときのために、かえでちゃんとあたしで、あらかじめ見つけておいた場所なのです。
カア。
カラスが鳴いています。
近くの、見上げるような高い木の枝に、カラスがたくさんとまっているのが見えます。
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