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「ほら、かえでちゃん、カラスだよ」
あたしが指さすと、
「うううっ」
もう我慢できない、といった感じで、かえでちゃんは笑みを消し、くわっ、と目を見開きました。頭上をあおぎ、木にとまっているカラスをにらみつけると、
「ちくしょう!」
するどい気合を飛ばしました。
バンッ!
木の太い枝のところで、二、三羽のカラスが、こっぱみじんに破裂するのが見えました。まるで、鳥の体内に埋めこまれた爆弾が爆発したかのようです。
まわりのカラスたちが、いっせいに空へとはばたきました。
「ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう!」
空に飛びたった黒い群れに向かって、かえでちゃんが続けざまに気合を飛ばします。そのたびに、二羽、三羽と、カラスが弾けとびます。灰色の曇り空を背景に、カラスの血や内臓や羽が飛び散りました。まるで小さな暗い花火のようです。飛んだ血や内臓が、次々にふってきます。羽はふわふわと舞って、ゆっくりと落ちてきます。あたしたちが立っている場所から、十メートルくらい離れた草むらへと、カラスの残骸は落ちてくるのでした。
そうやって、かえでちゃんは二十羽以上のカラスを破裂させました。
残りのカラスは逃げてしまい、もう上空に見えるのは、もとの曇り空だけでした。
ハァ、ハァ、とかえでちゃんが肩で息をしています。怒りにまかせて「能力」をたくさん使ったせいです。
「大丈夫? 気がすんだ?」
あたしはかえでちゃんの肩に手をかけました。
そのとき――。
にゃあ。
鳴き声がして、そばの草むらから顔を出したのは、二匹の猫でした。黒い縞模様の猫と、茶と白の模様の猫です。ノラ猫でしょう。どちらも、薄汚れた感じがします。
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