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「佐倉、質問ばっかり。そんなに気になる?」 「べ、別に……」 「でもさ、あまり長居をすると、佐倉がここにいるのを誰かに見られるかもしれない。それは佐倉のイメージとは違うんじゃない?」  それは遠回しに『帰れ』と言われているように感じた。  ただ花が気になっただけ、温室に興味を持っただけなのに、一瞬で壁を作られてしまったような感覚に陥る。 「それもそうね……わかった、帰る」  衿子は唇を噛み締めると、原田に背を向けて立ち去ろうとした。 「晴れてる日は、基本水撒きなんだ」  しかし原田の穏やかな声が耳に届き、衿子は立ち止まって振り返ったが、彼は衿子の方を見てはいなかった。 「あとここは園芸部の敷地だから、人はほとんど通らないよ」  彼は何を言いたいのかしらーー黙ったまま首を傾げた衿子に、原田はチラッと目をやる。 「バラが見たければ晴れた日に来なよ。もし温室の中が見たければ雨の日に来ればいい」 「中、見せてくれるの?」 「その代わり、俺しかいないけど。みんな幽霊部員だから」 「それって……二人きりってこと?」  衿子の心臓は理由もわからず高鳴り始め、ドキドキを隠すように尋ねる。 「佐倉がどんな想像をしたのかはわからないけど、残念ながら顧問がいる」  原田がニヤッと笑ったため、衿子は恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまう。 「べ、別に変なことなんて想像していません! 今度こそ帰る!」  走り出した衿子は背中に原田の視線を感じながらも、今度は振り返らずに走り去った。
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