一夜目『終幕までは』

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

一夜目『終幕までは』

簡単な実験をしよう。 私は君だ、君は私だ。 私は私の知る君を演じる。 君は君の知る私を演じる。 その二つが限りなく100%に近い時、 思考の端切れまでもが似通った時、 私は私で無くなり、君は君で無くなるのか。 しかし顔貌は元の私たちのままだ。 人々は問うだろう。 「あの人はいったいどこに行ったのか」と。 「あの人を返してくれ」と。 はて、私はわたしだ。あくまで君を演じる私だ。 君の認識も同じくそうだろう。 ……さて、ここでひとつの戯言だ。『私』とはいったい何によって定義付けされるのだろうね? ──終幕の理想郷には、未だ届かない。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!