1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
一夜目『終幕までは』
簡単な実験をしよう。
私は君だ、君は私だ。
私は私の知る君を演じる。
君は君の知る私を演じる。
その二つが限りなく100%に近い時、
思考の端切れまでもが似通った時、
私は私で無くなり、君は君で無くなるのか。
しかし顔貌は元の私たちのままだ。
人々は問うだろう。
「あの人はいったいどこに行ったのか」と。
「あの人を返してくれ」と。
はて、私はわたしだ。あくまで君を演じる私だ。
君の認識も同じくそうだろう。
……さて、ここでひとつの戯言だ。『私』とはいったい何によって定義付けされるのだろうね?
──終幕の理想郷には、未だ届かない。
最初のコメントを投稿しよう!